2009-01-01から1年間の記事一覧

写真集サバービア

芸術新潮5月号。ぼくのコラムでは、アメリカの写真家Bill Owens が撮った“ Suburbia ”(郊外)という、大好きな写真集についての話題です。中身のすべての写真が好きな写真集なので、一つだけの写真を選んで絞り込むのは難しいと思っていたら、三十年ぶりに…

気韻生動

川端実作品には、大きい物(天地2mあまり)から小品まで、すべての作品に渡って、「気韻」(きいん)というものが溢れ出ていると思います。 「気韻生動」とは古い中国文人画の品評基準のひとつで、絵画に精神的生命力が躍如としているさまをあらわしていま…

ロイヤル・コペンハーゲンの茶碗

到来物の洋菓子にも、たまにはコーヒーや紅茶ではなく、煎茶の茶ウケとしていただこうというほどの煎茶好きであります。しかもただ漫然と煎茶を喫するだけではなく、その時々で茶碗などを選ぶという、やっかいなタチなのです。どうでもいい話ですが、和菓子…

ベティーの白い壁

今回の展示では、おもに川端実80歳代の作品が中心ですが、この右側オレンジ色の絵は一番古くて、先生がちょうど50歳、1961年度の作品です。ニューヨークではモダンアートとしての抽象表現主義が真っ盛りの時代の作品。キャンバスの裏側の木枠のとこ…

ハイボールで献杯

『川端実展』の準備完了! 久しぶりの大作品に接して、ひとり感極まったところで、 なにはさておき、先生の好きだったハイボールでまずは献杯!という次第。 先生の、懐かしきハイボール好きについては、以前ここに書いたことがありました。(id:osamuharada:…

川端実展のお知らせ

川端実の作品展は、4月12日からスタート、26日マデです。 芸術新潮4月号、ぼくのコラムの出だしは、こんな風に川端先生を紹介しています。《 1950年代に現代美術の本拠地ニューヨークに身を投じた川端実(1911〜2001)は、抽象表現主義の総本山ベティ・パ…

助六由縁江戸桜

桜、満開ですね。 いつも桜にあわせて何か音楽などを聴くのですが、今年は久しぶりに歌舞伎のレコード。昭和37年4月歌舞伎座での、もはや47年前の実況録音盤を聴く。十一代目市川團十郎(1909-1965)の歴史的名演『助六由縁江戸桜』。「助六ゆかりの江戸桜」…

亀寿の茶碗

先日、銀ブラをしていたら、茶道専門の骨董屋さんで宮田亀寿(120年位前の京都清水の陶工)の煎茶茶碗をみつけて、ラッキー!とばかりに即購入。煎茶道の本場は西日本であるし、宮田亀寿のような一代の陶工のものは関東ではめったに出ませんと、千葉が本店の…

川端実のコラージュ

芸術新潮4月号に「川端実のコラージュ」を書きました。大作の抽象画が多かった画家の、珍しいコラージュ作品についての話題です。文中にあるニューヨークのアトリエで、そのコラージュとエスキスを先生から見せてもらう、まさにその刹那の、ぼくにとっては決…

舩木さんのスリップウェア

毎年春が近づくと、わが食卓では、舩木伸児さん作スリップウェアの出番です。なかでも中央にある淡黄色の大皿(30cm)には、旬の野菜や、春の魚などがよく映える。特にコレは春の皿だと勝手に決めている。 島で作る地産地消の野菜や根菜類、友人宅からもらっ…

ブロッサム・ディアリー

先月ブロッサム・ディアリーが亡くなった。八十二歳でした。まだレコードしかない時代の、若い頃によく聴いていました。甘く可愛らしい声でピアノの弾き語り。1956年のアルバム Blossom Dearie のなかのフランス語で歌うジャズボーカルが特に好きだったのは…

小林泰彦 山の原画展

先日銀座で、我が憧れ小林泰彦さんの、山の原画展「無名百低山」を拝見してきました。かの「日本百低山」(山と渓谷社刊)が上梓されたのは2001年です。その後も名低山を探し続けておられ、今回は旅の途中で描かれたという15山の原画展。登山家・画家・イラ…

吹きガラスの花瓶

島のアトリエでの話。客室の玄関が狭いので、圧迫を感じないよう、戸を開けてすぐ正面の壁部分を、一部ガラスのはめ込みに、と自分で設計をしました。二階なので、ガラス窓の向こうには小高い林が続いている。漆喰壁で矩形に切り取られた外の樹木は、それだ…

ロイ・リキテンスタイン

もう半世紀も前になるから現代美術とは呼びにくくなった、アメリカのポップ・アート。二十世紀芸術とでも言ったほうがシックリします。今月の芸術新潮に、そのポップの旗手だったロイ・リキテンスタインの、ちょっと珍しい作品について書きました。ポップ・…

歌舞伎座終幕

松竹は歌舞伎座の建物をブッ壊して、新築の貸しビル屋になるそうで、来年五月頃から工事が始まる。年初から「歌舞伎座さよなら公演」と銘打って、つまりは閉店セールのようなのが一年あまりも続くという。中野翠さんは前に会った時から、銀座の記念的建築物…

宮田重雄の色紙

昨日で『宮田重雄さしゑ展』無事終了致しました。当ブログや芸術新潮をお読みくださって来られた方ゝ、古くは「ぼくの美術帖」をご愛読していてくださった方ゝ、いずれもさまが美術の好きな同好の士。お目にかかれてとても嬉しかったです。厚く御礼申し上げ…

宮田重雄のマチエール

宮田重雄は、まず油彩画の画家で、医師でもあり、戦後のラジオ(二十の扉)やTVで人気があった、今でいうなら文化人タレントでもありました。獅子文六との親密な交流から、挿絵を担当することになり、それらが続々と大ヒット作となりましたが、あくまでも…

青春怪談のさしゑ

本日より「宮田重雄さしゑ展」始まります。 昭和二十九年(1954年)読売新聞に掲載された新聞小説、獅子文六著『青春怪談』のための挿絵原画がメインで、右のように並べて25mほどあります。 これはなんと55年も昔の作品なのです。ぼくが8才の頃ですから、こ…

壷と水差し

宮田佳子ちゃんからいただいた宮田重雄先生遺愛のスペインの水差しと壷を、島のアトリエに運び、リビングルームの飾り棚に置かさせていただきました。それだけで部屋が明るく暖かみを帯びてきたようで、居心地が良くなりました。むかし「ぼくの美術帖」を書…

宮田重雄さしゑ展

来週の金曜日から『宮田重雄さしゑ展』がスタートします。 芸術新潮2月号では、こんな風にぼくは紹介しています。《 新聞小説は、百年前のメロドラマ、尾崎紅葉の『金色夜叉』でブレイクして、七十年前の吉川英治『宮本武蔵』で時代小説ブームに火がつき、そ…

ハリーとトント

先週NHK−BS2の深夜映画で、名匠ポール・マザースキー監督『ハリーとトント』(1974年)を久しぶりに観ることができた。老人ハリー&雄猫トントのロードムービー。小津安二郎監督『東京物語』が下敷きになっているという。ハリーが笠智衆で、猫のトント…

椿とメジロ

晴天の冬座敷、窓をあけはらって、周囲に咲きはじめた椿に目をやると、四六時中、元気いっぱいのメジロ仲間が忙しくやってくる。鶯色に目のまわりだけの白色が何とも愛くるしい。島の陽射しは暖かく、どこまでものどかなる一日であります。こういう時には、…

歳寒二友

京都の竹包楼で買った『鉄斎扇面』を眺めていたら、椿と梅の二種が描かれた扇に「歳寒二友」と賛がある。中国では古来より、主に松・竹・梅を指して「歳寒三友」というはずだが、これは富岡鉄斎が勝手つくって二友と称した賛のようだ。中国原産の梅は江戸時…

桂文楽

菊六落語会、このブログだけでお知らせしたにもかかわらず、たちまちの満員御礼ありがとう存じます。 どうも世間では落語がちょいとしたブームになっているらしい。さて前回、宮田重雄ゑがく志ん生の挿絵原画を載せたところ沢山の反響があったので、引き続き…

古今亭志ん生

菊六君のおッ師匠さん古今亭円菊は、あの古今亭志ん生の最後のお弟子さんでした。1973年に志ん生は亡くなっているので、菊六はまだ生まれてなかったけれど、正しく志ん生の孫弟子ということになっちゃう。考えたらスゴイことだよね。菊六は十代の頃に、…

菊六落語会のお知らせ

第七回 『古今亭菊六落語会』 本日より御予約うけたまわります。 冷えきった時代になってしまいましたが、こういう時節にこそ、祖先が私達に残してくれた健康的な笑いは、ありがたいものですね。古典落語の世界にしばし浸って、ハートに明るい灯をともしてい…

アライグマ症候群

混んだ地下鉄に乗っていたら、車体がガックと揺れたので、吊り革をつかみそうになって気づいた事。 急に足元がフラついたので、吊り革に向って手を伸ばしたところ、丸い輪の部分が眼に入った瞬間、思いがけず輪を避けて上のベルトのほうをつかんでいたのです…

歳寒三友

日本では「松竹梅」といって、縁起物のオメデタイ言葉になっているけれど、もともと中国では、とくに明末清初時代の、文人画の画題として好んで描かれていた松竹梅の組み合わせを、「歳寒三友」と呼んでいました。いずれも寒さに耐える元気なところから、節…

ケイト・ブランシェット

今月号の Interview 誌、オーストラリアの女優ケイト・ブランシェットが表紙を飾っていて、ARTの特集記事に名を連ねている。それも現代美術でおなじみダミアン・ハーストやジェフ・クーンズ、リチャード・プリンスにシンディ・シャーマンといった面々に混じ…

夜店の白梅

おととしの暮れの上野で、友達と酔っぱらって夜店をヒヤかしていた時、つぼみばかりの鉢植えの梅の木を眺めていたら、威勢のいいお兄さんが、こいつァ元旦の日から咲きはじめるんで、というので半信半疑ながらもつい買わされてしまった。ほんとかな?酔いか…