Paperback のイラスト

osamuharada2016-08-27

スティーヴン・キングの長編推理小説『ジョイランド』の邦訳が、やっと今夏7月に出版された(文春文庫)。読み終わると、青春小説のような味わいが残る爽やかなミステリー。一人称 (ぼく)で語り、1973年にあった事件を回想するという仕組み。往時のアメリカ文化を時代考証的にも楽しめちゃう。オリジナルはスティーヴン・キング自身の希望でペーパーバック専門の Hard Crime Case 社から刊行されています。前にも「Paperbackのイラスト」としてこの表紙絵について書きました。→ [id:osamuharada:20131212]
オリジナルはペーパーバック本らしく、表紙のイラストまでが擬古的で、最初にニューヨークで見たときには、本物の古いイラストを使っているのかなと錯覚したほどでした。あとでノスタルジックな描法で描くイラストレーターがいると知って驚嘆しました。技術的にも考証的にもそうとうマニアックな人ですよね。 その 【 Glen Orbik 】 さんをサイトで調べると、ぼくも好きな美人画のエルブグレンに影響を受けているよし。正しくオマージュとして描かれているのがよく分かる。伝統を大切にするイラストレーターであるところが、とても好ましい。 美人画エルブグレンについては→ [id:osamuharada:20051221] [id:osamuharada:20080425] [id:osamuharada:20090511]
『ジョイランド』の表紙に、チャーミングな脇役「ハリウッドガールズ」を持ってきたところが実に巧妙なのです。推理小説ではネタバレさせないこともイラストレーターに課せられている。何を描くか、表紙のアイデアひとつでガラッと本の印象が変わるものなのです。( 日本版の文庫カバーイラストも同じアイデアを使っているが、女性の顔を完全にカメラで隠しているのでブキミになる。これを見てキングのおぞましいホラー趣味を期待して買った読者は、あとでガッカリすると思う。)
Glen Orbikさんは、1963年生まれ。惜しくも、昨年まだ51歳の若さで亡くなられたそうです。合掌。他の作品がいくつか見られます。→http://www.heavymetal.com/news/in-memoriam-20-paintings-by-glen-orbik-modern-master-of-pulp-cover-art/
Hard Crime Case 社のペーパーバックには、まだ何人かの常連イラストレーターがいますが、Glen Orblik さんのイラストには明朗さがあるのですぐに分かる。→http://www.hardcasecrime.com/books_bios.cgi