助六由縁江戸桜

osamuharada2009-04-04

桜、満開ですね。 いつも桜にあわせて何か音楽などを聴くのですが、今年は久しぶりに歌舞伎のレコード。昭和37年4月歌舞伎座での、もはや47年前の実況録音盤を聴く。十一代目市川團十郎(1909-1965)の歴史的名演『助六由縁江戸桜』。「助六ゆかりの江戸桜」と読みます。ぼくは16歳で観たのですが、このトシまで、いまだにこれ以上素晴らしい舞台は他に観たことがないのです。一期一会という感じ。このレコード解説で早大河竹繁俊教授は《江戸歌舞伎においては、古くから「一声 二ふり 三男」ということが唱えられている。これは歌舞伎俳優としての資格、条件をいったもので、第一には音声がよくていわゆる名調子でなくてはいけない。また第二のふりは姿態の美、さまのよさをいい、第三は容貌のよしあしなのである》として、十一代目は《 この三者をまさに兼備しているといってよい。明晰にして自由自在なセリフまわしは当代無比、すがたも男前も申し分ないのだから、じつに鬼にかな棒とはこのこと》と、絶大の評価を与えています。レコードなので十一代目團十郎の、誰も真似ることが出来ないその「一声(こえ)」だけが聴ける。ナマで録音されたこのレコードは、さらに助六の下駄の音から、観客の歓声まで、舞台と客席の一体感が如実にとらえられてリアルです。 音だけでも、あの舞台姿が目に浮かぶ。 市川家の「助六」には、「河東節」という古浄瑠璃の演奏が使用されます(他家は長唄や清元)。コレがまた好きな古曲なので、ぼくの春と桜のイメージは、河東節の「 しんぞ命を揚巻の、これ助六が前わたり、風情なりける次第なり。」となって、はるか江戸の昔へとタイムスリップすることができちゃうわけです。この名盤をデジタル・リマスタリングして、CD化して欲しいもんですな。