ベティーの白い壁

osamuharada2009-04-15

今回の展示では、おもに川端実80歳代の作品が中心ですが、この右側オレンジ色の絵は一番古くて、先生がちょうど50歳、1961年度の作品です。ニューヨークではモダンアートとしての抽象表現主義が真っ盛りの時代の作品。キャンバスの裏側の木枠のところに、個展のときのBetty Parsons Gyalleryの札が張ってありました。画廊主のベティ・パーソンズ女史(1900〜1982)は、ポロック、スティル、ラインハートをはじめ、エルスワース・ケリー、ジャック・ヤンガーマン、マーク・ロスコ、バーネット・ニューマンら抽象表現主義のおもだった画家たちを世に送り出した画商なのです。
1947年、ポロック最初の個展で、ベティ・パーソンズ画廊はこけら落しとなるのですが、この時に今では美術館でも当たり前になった白い壁が出現したのですよ。面白いですね。以下はベティの言、《 ギャラリーに無地の白い壁を使ったのは、私が最初なのです。なぜかとおっしゃるの?抽象表現主義の大作を展示することになって、ギャラリー自体の姿についても考えてみました。その頃の画廊の多くは、壁をベルベットで覆い、ヴィクトリア王朝風の装飾を施していたのです。私はそんなものは願い下げにしたいと思いましたし、画家たちも私の意見に賛成してくれました。ジャクソン・ポロックの大きな油絵を展示する時、その背景となる壁がビロードでは恰好がつかないじゃありませんか。白い壁はとても引き締まった感じがします。私は画廊の中に、何も置かないことにしました。家具もなし。椅子一脚か、それともベンチを一つ。それだけです。できるだけ飾り気のない、簡潔なものにしようという考えでした。それが受けたのですね。》