歌舞伎座終幕

osamuharada2009-03-04

松竹は歌舞伎座の建物をブッ壊して、新築の貸しビル屋になるそうで、来年五月頃から工事が始まる。年初から「歌舞伎座さよなら公演」と銘打って、つまりは閉店セールのようなのが一年あまりも続くという。中野翠さんは前に会った時から、銀座の記念的建築物が無くなるのには大反対と言っておられて、今日そのことについて詳しく書かれた「文芸春秋」三月号のコピーを送ってくださった。題して「歌舞伎座取り壊し私は許せない」とある。
ぼくは五、六歳の頃から、オフクロに連れられて以来、歌舞伎に耽溺して十代二十代を過ごし、三十代まではしっかりと観劇していた。その最も慣れ親しんだ劇場、というよりは愛着ある歌舞伎座のことだから、同じく取り壊しにはムロン反対です。好きな吉田五十八設計の内装や、ロビーの鏑木清方の絵(芝居見物母娘の図)、三階にある小さな絵馬を集めた額(なかでも久保田万太郎の絵馬《 東京のまッたゞなかの霞かな 》の一句)などなど、行くと必ず見てたので無くなっちゃうのは淋しい。 しかし、このミゾユウ!の大不況で、貸しビルやってもテナントなど入らんだろうに、どうなるんだろ? 壊して結局ただの空き地になるだけかも。
いずれにしても中身の歌舞伎芝居そのものが、今は学芸会程度だから、建物だけを残したってしょうがないかもな。現在の歌舞伎は世襲制という悪弊のため、すでに終わっちゃってると思う。コレって前に書いていました。(id:osamuharada:20050105)
とは言うものの、最後の歌舞伎座で、記念?に何か観てはおきたいと、前を歩くとつい公演ポスターを眺めてしまうのです。今のところみるべきは、四月の『廓文章』、「吉田屋」の一幕だけかな。坂東玉三郎の夕霧に、片岡仁左衛門(と言うより孝夫)演じる紙衣やつしの伊左衛門。思い出の「孝玉コンビ」。いつも一緒に観ていた母や友は、もうこの世にいない。