トークセッション報告

osamuharada2015-09-24

【 OSAMU GOODS TRIBUTE 】でのトークセッション。展示中の9月13日に、オサムグッズ生みの親・石井志津男さん(写真右)、 Groovisions の伊藤弘(左)さん、と ぼく(中央)の三人での四方山話でした。
はじめはアナログ時代(ぼく)とデジタル時代(伊藤さん)のキャラクター談義を計画していたのですが...。フタをあけてみたらお客さまがオールド・オサムグッズ・ファンの女性のかたばかりだったので、専門的なデザイン論にはあまり言及せずに終始してしまいました。せっかくぼくの大好きなデザイナーの伊藤さんをお招きしていたので、セッション終了後のピザ屋さんでの語りたりなかった内容をここに追記します。
ぼくがオサムグッズをデザインしていた'80年代。まだコンピューターは普及してないから、何でも手づくりのアナログの時代。手描きであることは個性的な表現につながっていました。「キャラクター」とは「性格」のことですから、他との識別可能な、際だった特長が必要とされます。ひと目で何かが分かること。また景気が上向きの'80年代は、キャラクターに前向きで明るい個性が望まれた時代でもありました。
'90年代に入った直後、それまで右肩上がりだった経済は突然バブル崩壊。やがて閉塞感で人心も冷えこんでしまい、ローカルで、どことなく投げやりな「ゆるキャラ」が表舞台にあがりました。絵の個性うんぬんよりも、奇妙な風体そのものが好まれたようです。ちょんまげを結った猫のような着グルミ人間とかね。バカだなと笑えちゃうキャラクター。または逆に不穏な三白眼の危ない少女といった「ブキミかわいい」キャラクターも、あの頃の時代を反映するものでした。
一方で、グラフィックデザインの世界はすべてがデジタル化され、グルーヴィジョンズの「チャッピー」を嚆矢とする、いわば無個性のキャラクターも出現しました。デジタル的に記号化され増殖してゆく超クールなキャラクター。伊藤さんは、着せ替え人形という発想で「チャッピー」をつくられたそうです。キャラクターは分解されて、モジュール化される。デジタル画面上では、自由にそのモジュールを組み換えて、好き勝手にマイ・チャッピーをつくることができちゃう。まさに電子着せ替え人形という感じですね。チャッピーの発想は、その後のイラストレーター、とくにパソコンで絵を描く若い人たちにも多大の影響を与えたと思います。
キャラクターは時代を映す鏡でもあるでしょう。今年は思いがけず、デジタルならではの パクリコピペ・デザインという不名誉なものまで発覚しましたが、一体いまはどんな時代なんだろうね。それも強引に白紙撤回されたあとでは、次にどんなデザインやらキャラクターが登場してくるのか(またはしないか)、いずれにしても激変するこの時代においては(他人事のようだけど)今後が面白いです。
【10月3日 追記】このトークセッションは、オサムグッズの公式ホームページにて連載スタート。→http://www.osamugoods.com/news/index.html

国会コント

osamuharada2015-09-18

ひと夏、愉しませていただいた「東京五輪パクリデザイン劇場」も、一幕目のファース(笑劇)が終わり、二幕目のリーガルミステリー(法廷劇)を待つばかりとなった。感情論の次は客観論ではじまる。
その幕間に、昨日の参議院「アンポ法案強行採決」への8分間コント(寸劇)で爆笑させてもらった。
自みん党議員たちが専守防衛すべく、ちっちゃな委員長(やはり自みん党)のまわりを取り囲む。ひとりの野党議員が、果敢にその囲みを飛び超えんとダイブするも、仕切り役のチョビひげ隊長(自みん党)が強烈な右パンチでこれを撃墜(この決定的瞬間すかさず海外メディアが伝えた)。海外から見たら立派なスラプスティックコメディになっているもんね。無声映画ファンならキートン・コップスを思い浮かべるシークエンス。
またこの囲み人海戦術は「人間かまくら」ともいわれる政治家の古典的戦略なんだそうです。国会コントにふさわしき傑作ネーミング。その「人間かまくら」に守られた委員長に、人垣で中は暗くて字も読めないであろうとおもんぱかり、一議員が用意周到、かまくら天井部分から小型懐中電灯で後方支援、かまくら内部を照明するという高等戦術を用いていた。
今日のニュースで知ったこと。実はちっちゃな委員長のほうにも秘策があったというネタ。強行採決の一声をあげるさい、委員長の手にした進行表収奪に襲いかかるであろう野党側に対抗し、あらかじめ広告チラシの紙一枚をダミーとして進行表の上に乗せておいたという。これで敵はダマされて上のチラシ紙をゲット。そのすきに下の本物の進行表を読んでしまおうという巧妙な作戦を用意していた。しかもそのダミー用紙たるや、新橋演舞場スーパー歌舞伎「ワンピース」の宣伝用チラシだったというオチがつく。委員長はマンガ好きか猿之助ファンか、どっちだろう? という無関係な謎を残したまま国会コント終了。
それにしてもかのチャップリンの名演技に近づいた自みん党のチョビひげ参議院議員。1960年 福島生まれの俗にいう新人類世代。37歳のときに留学した先は、なんと「アメリカ陸軍指揮幕僚大学」だというから恐れ入谷の鬼子母神。卒業後はゴラン高原イラクサマーワで従軍。このアンポ法案(戦争法案)が、最初から宗主国アメリカさまの御託宣だったというのがバレバレだよね。集団的自衛権とは日米軍事同盟にほかならない。もしかしたら昨日の一件は、チョビひげ隊長の軍事クーデター、というミニミニコントだったのかも知れないな。
【9月20日追記】 三日坊主ニュース:連休に入ったとたん国会コントは忘れ去られ、庶民はラグビー合戦で盛りあがる。南アフリカ(元英国植民地)vs.日本(晴れて米国植民地となった)の一戦。ラグビー試合など見たことなかったが、日本選手のユニホームを見てビックリ。両肩にくっきり赤い日の丸があるではないか。それに赤のストライプとは、まるで大日本帝国海軍海上自衛隊も)の日章旗ですね。これもエンブレム同様、モリ&パクリデザイナーの仕業かな。試合映像を眺めていたら一つ発見。国会コントの「人間かまくら」の元が、ラグビーの「スクラム」であったということ。味方がガッチリ組んで中のボールを死守する戦法。チョビひげ隊長は、ちっちゃな委員長をラグビーボールに見立てたワケだね。
【9月22日追記】 東京五輪エンブレム・ニュース:劇場側と五輪側では一件落着。《佐野氏のロゴが最終的に撤回されたため、劇場は争点となっているロゴが劇場のものと類似していたとしても、劇場の権利を侵害しないことを認める。》ということで、「類似していたとしても」とパクリ疑惑をそのまま残し劇場と五輪の間の紛争はこれで終了。しかしベルギーのデザイナー・ドビ氏は訴訟を続行する(裁判所は来年2月2日に弁論期日を設定)。次は著作権をめぐる一騎打ちになるのかな。

ぼくの装幀本

osamuharada2015-09-08

オサムグッズのデザイン以外では、本の装幀デザインもやったことがあります。広告のデザインにはまったく興味がなかったのですが、本の装幀デザインは大好きで、自分の趣味を活かせる場合にのみ受注しました。
小村雪岱北園克衛への「オマージュ」であることは、『ぼくの美術帖』を読まれたかたなら察しがついていたでしょう(もちろん足元にも及びませんが)。「インスパイア」されて自らのデザインをする楽しみがありました。手作りに近い版下のアナログ時代です。当時よりさらに昔風のノスタルジックな’50年代スタイルを好んでいました。
装幀の仕事ではイラストのみを頼まれることがほとんどだったうえに、自分に合わない(やりたくない)本のデザインは断っていたので、ぼくの装幀本は数が少ないです。そのせいかディレッタントの域を脱していなかったな、といまにして思います。
ちょっぴり装幀本をTumblrに保存してみました。→http://osamuharada.tumblr.com/

東京五輪デザインノート

osamuharada2015-09-03

「パクリ」疑惑の渦中にあるデザイナー氏は、わが母校と同じ多摩美術大学グラフィックデザイン科の出身で、去年からは母校の大学教授に就任しておられた。
そして多摩美の宣伝物にも教授自らがデザインをされていたのだが、ネット上ではとうとうその多摩美デザインにも「パクリ&コピペ」が発覚してしまった。この問題に大学側がどう対処するかはまだ公表されていない。しかしこれはデザイン科の存立危機にまで及ぶ問題に発展するでしょう。さてどうする、晩節を汚してくれたわが母校、多摩美術大学
このドタバタ騒動の発端となったベルギーの裁判は、いよいよこの22日からスタートします。これは商標権といった商法上の(商売のための)訴訟ではありません。国際的な知的財産権(文化芸術のため)をめぐる裁判になるのです。訴訟の傍証として、グラフィックデザイナーが出身校の美術大学で教授となりパクリやコピペを平然とやっていたら、反証の余地などまったくないのでは。
この裁判は単純な商標権問題とはちがって、歴史あるベルギー国王の劇場と敵対することになります。地図上は小国でも、ヨーロッパをいまも厳然と支配しているのがベルギー国王やオランダ国王なのです。あのユーロの本部はベルギーの首都ブリュッセルに置かれていますよ。相手国を甘くみていたとしたら、とんだ地雷を踏んだ裁判にもなりかねないと思うのですが。
専門的な話(ご興味ない方はパスしてね)になるけれど、シンボル・デザインの著作権問題は、たんに見た目が似てる似てないかだけではありません。そのデザインを構築するための、いわば設計図そのものに著作権があるのです。ベルギーのリエージュ劇場ロゴ・デザイナーであるオリビエ・ドビ氏は公表されています。(上の写真:http://www.debie.com/display.php?JobCatID=1&JobID=0150)まず正方形の中心から同心円が描かれ、全体を包括する外側の円周がどういう比率で算出されたかがよくわかります。劇場名の「T」と「L」のセリフもこの円周によって導かれています。そこに内在する円周は、東京五輪エンブレム「隠された日の丸」の円周とソックリの構造(Constraction)ではないですか。もっとも疑惑デザイナー氏原案?の「T」は三角形で、円周は無かったことになっている。では誰が後でこの円周(日の丸)を挿入させたのか? 突き詰めればパクリ(著作権侵害)の真犯人が浮かび上がってくる可能性もあるでしょう。これから始まるリーガルミステリー、目が離せなくなりそうです。
問題の多摩美デザイン http://netgeek.biz/archives/47637 (米国からパクリ中国からコピペ) TAMABIが沈められ溶解する不吉な予見か。しかもコレでデザインの殿堂 NEW YORK ADC AWARDの金賞をとったとは驚愕せざるを得ない。(多摩美はコレを何の説明もなくHPから削除したもよう)

さよなら鎌倉近代美術館

osamuharada2015-08-23

【 美術ノート 】
あと半年ほどで閉館になるという、鎌倉の『 神奈川県立近代美術館 』へ。なくなっちゃうのは惜しいな。ここは川端実先生との思い出ある場所だった。一棟はすでに閉鎖、現在は二室のみでの展示中。第一室では、劉生の「麗子像」が他を圧して燦然と輝いている。岸田劉生こそは日本近代絵画の最高峰だと確信する。麗子の瞳に「永遠」が宿っている。外に出て二階の蓮池を望むカフェでは、「川端実展」( 1975年 )のときに先生と長々話をしたことなどが懐かしい。そして扉を開けて第二室に入ると、真正面に半世紀前の川端実作品(1961年)が掲げられていた。しばし感涙。純粋な生命力の発露、画品の高潔さで同時代の画家たちを凌駕しているのは一目瞭然。あるとき先生は「 画家が死んだあと、その絵が百年、二百年と持ちこたえるかどうかだな。」と話された。その言葉が今になってひしひしと感じられる。
イラストノート
上野から蓮の咲く池之端を通って『 弥生美術館 』へ。先年亡くなったイラストレーター「森本美由紀展」。伝統的ファッションイラストを描ける最後の人だった。フランスのRené Gruau(1909〜2004)を憧憬していた森本さんは、グリョーのサイン✳︎印とgの文字 を真似て、自ら「✳︎ m」と署名をしていた。「オマージュ」の表現であった。50年代 VOGUE 誌を嚆矢とするこのスタイルは世界中で流行したが、René Gruau の源流は Christian Bérard(1902〜1949)にあるとぼくは考えている。ファッションイラストの系譜。

【 デザインノート 】
東京五輪エンブレムデザイナー、とうとう「コピペ」常習が証明されてしまった。また誰かが〈おでん〉を使って傑作「パロディ」作品をつくったが、シャレのわからない五輪側はこれを恫喝してストップさせたよし。それにしてもマスコミは、生ガキ競技場デザインの件で「審査委員長・安藤忠雄」をさんざん叩いたというのに、東京五輪エンブレムデザインの「審査委員長・永井一正」のほうはまったく追求も取材もしていない。ひとり横尾忠則さんが、選んだ審査員側の責任問題を訴えられていた。審査にあたったこの広告デザイン利権グループは、親子兄弟、師弟関係でバッチリ繋がっているそうだ。広告費で食べているマスコミには歯が立たないのだろう。
元気いっぱいの孫の夏休みにつきあいながら、T V ニュースでパクリ疑惑デザイナー氏の釈明映像を眺めていたら、孫 (幼稚園児)が「このおじさん、まじ ヤバクない?」と突然つぶやいた。けだし名言、と祖父は思ったね。

ぼくのデザインノート

osamuharada2015-08-15

【 ぼくのデザインノート 】
イラストレーターとデザイナーは別の職種なのですが、両方を兼ねることもできます。かつてぼくが自分でつくったキャラクターを自前でデザインしていた時期は、1970年代後半から’90年代前半までのことでした。年齢でいうと三十から四十半ばまでかな(ずいぶん昔のことで呆然)。
1992年頃には【 OSAMU GOODS STYLE 】という小雑誌をつくりました。自分で描いたキャラクターを自分で商品デザインして、さらにそれを自分で雑誌に仕立てる。つまりこれらがすべて自分流の「スタイル」というわけね。この雑誌づくりでは、表紙撮影や編集デザインも楽しみました。ほとんど遊び半分なのでしたが…。当時はデザインするにも、製図板や三角定規に鉛筆といった超アナログな時代です。大きな黒幕の張られたトレスコープの中にもぐり込んで、写真の縮小拡大や文字のレイアウトをしました(夏は地獄)。文字は自分でレタリングをするか、写真植字(写植屋さんに注文する)しかない頃でした。しかも製版代や印刷代は高額で、とても商売なんかにならなかった。
その小雑誌【 OSAMU GOODS STYLE 】の一部ですが、マイ Tumblr に保存(30点)してみました。おひまなときにご覧ください。→http://osamuharada.tumblr.com/
【 デザインのパクリ問題 】いま話題騒然の一件について。
専門的な話ですが(興味ない方はパスしてね)、誰かのデザインに「インスパイア」されて制作をした場合、どこか似たようなデザインになってしまう可能性もありますよね。注意点は、その誰かに損害をあたえるかどうかで、著作権法に触れちゃう場合があること。いま話題の東京五輪マークのデザイナーは、ベルギーの国立劇場マークなんぞ見たこともないから無罪であると主張している。見なければ「インスパイア」もされないから、偶然似ていたと言い逃れはできるかも。さてどうなることやら、同業者としてはちょいと気になる問題です。
「インスパイア」されても、当のデザインに対する憧れや尊敬で「オマージュ」として制作されたものは、出典を明らかにさえしていれば問題になることはないのです。相手にとっては「トリビュート」されたことにもなっちゃうしね。前掲の、ぼくの小雑誌「OSAMU GOODS STYLE」の表紙デザインは、アメリカの雑誌 LIFE への「オマージュ」です。週刊誌 LIFE(1936〜1972)の表紙デザインは、ながらくぼくの憧れの的でした。
出典が明らかでも、「パロディ」の場合は、風刺や諧謔が目的なので、相手から「名誉毀損」で訴えられる場合もあるし、逆に「表現の自由」で対峙することもあります。フランスのシネがいい例ですよね。→[id:osamuharada:20150701]
しかし「パクリ(盗作)」とは、出典を隠しておいて、こっそりパクっちゃうわけだから姑息だよね。しかもそれを自分の商売に利用したのであれば問題になるでしょ。ところで東京五輪デザイナー氏、こんどはサントリーの仕事で「コピペ」問題が発覚したという。ヤバくなると子分のデザイナーをシッポ切り(アベみたいだね)するとは、最高責任者のアートディレクターとしてプロ失格でしょう。今後「コピペ」は、デジタル時代のまったく新しい著作権侵害問題へと発展してゆきそうな感じですね。


〔8月30日: 追記〕小雑誌【 OSAMU GOODS STYLE 】には、もう一冊(6号目が)あったのを思い出しました。遅ればせながらTumblrに15点ほど追加します。この頃、キャラクターなしのデザインだけでオサムグッズもつくりました。しかもフランス語。何だったのだろう? http://osamuharada.tumblr.com/ (←拡大できます)

OSAMU GOODS TRIBUTE

osamuharada2015-08-14

【 展示会のお知らせ 】
原宿にある BEAMS のギャラリーで【 OSAMU GOODS® TRIBUTE 】と題する展示会があります。オサムグッズのキャラクターを使っていただき(原画のみ提供)、ビームスのデザイナーさんや、ギャラリーの常連アーティストさんたちが、それぞれ自由に OSAMU GOODS をデザインして販売するという企画展です。
なかにはパレットクラブで講師をされている、ヒロ杉山さん(ENLIGHTNMENT)や伊藤弘さん(GROOVISIONS)もデザインに参加されています。またオリジナルの OSAMU GOODS の 展示( 非売です) は、土井章史さん(TOMS BOX)が集められたコレクションのなかから出展していただきます。土井さんは絵本の分野で著名なかたですが、実は強力なオサムグッズ・コレクターでもあられます。パレットクラブでは絵本の講師もお願いしています。今回は土井さん特選による OSAMU GOODS というわけですね。皆さんがどんなデザインと展示をしてくださるのか、ぼく自身が今から楽しみにしております。またトークセッション(よもやま話)もありますので、お気軽におでかけください !
    OSAMU GOODS ® TRIBUTE
8月28日(金)〜9月16日(水) : トーキョー カルチャート by ビームス(原宿)

残暑お見舞い

osamuharada2015-08-10

記録的な連続猛暑にもやっと陰りがみえてきましたね。すでに島では涼風が吹いています。この老人もまだ何とか生息中です。くだんの蔓草をからませた日除け棚?も役に立ちました。(写真:http://osamuharada.tumblr.com/
夏休み中に聴く音楽は、狂気のアベ政権のおかげで、いつもの夏のボサノバやズークといったリラックス気分にはなれず、ソウルやジャズを大音量にて聴いています。リラックスというよりは憂さばらし。ジャズでは、弘田三枝子の’70年代もの。得意の黒人ソウルっぽさがはっきり出ていて、ポップス時代の「うなり」節が生きている。’60年代に、弘田三枝子の唸る部分は、演歌の都はるみに影響を与えて「はるみ節」を完成させた。子供の頃の弘田三枝子は、米軍のキャンプで歌っていた。同い年の伊東ゆかりも、同じ頃に米軍キャンプで歌っていたそうです。二人のリズム感と米国語がごく自然なのは、同じ経験がものをいっているんだね。伊東ゆかりちゃんの歌うジャズが RELAXING なら、弘田三枝子は SOULFULY という感じかな。
弘田三枝子ジャズを聴き進むうち、これぞ今の気分にピッタリというカバー曲があったのでハマりました。それは、いわずと知れたマーヴィン・ゲイの代表曲【 What’s going on 】。暑さをぶっとばすジャズとソウルを聴きくらべて楽しんでいます。ご存じない方のために、ちょいとYouTubeから拝借。字幕も出ているので解りやすいです。猛暑にめげず、自みん党の「そんなことしてたら就職できないぞ!」の脅しにもめげず、海へも山へもいかず、個々にプラカードを掲げ、デモ行進をしている高校生にも聴かせてあげたいな。
Picket lines and picket signs Don’t punish me with brutality Talk to me, so you can see Oh, what’s going on   What’s going on

今日もデザインノート

osamuharada2015-08-07

ヤツガレもデザイナーのはしくれとして、一言いわせてもらっちゃおう。パクリ疑惑の東京五輪エンブレムデザイン。当のデザイナー釈明会見を聴いて、オヤッ?変だなと思ったのは、似てる似てないの主観的問題ではなく、デザインそのものの「解説」のほうでした。
ベルギーの国立劇場【 Theatre de Liege 】 には、【 T 】と【 L 】とに単純な必然性がある。誰にでも、ひと目であの劇場名だな、と意味が通じる。これに比べると東京五輪は、Tokyo の【 T 】だけはわかるけど、【 L 】になんの必然性もないではないか。結局デザイナーの言い分は、【 L 】のセリフ(文字のはね部分)のほうは文字ではなく、隠された日の丸の輪郭線であるというような解説をしていた。苦しい言いわけに過ぎない。何かのシンボルとしてのデザインというものは、一瞬のうちに内容が分るものでなければならない。それがデザインの基本というものでしょ。
もっとも、シンボルの裏に隠された意味があるとしたら、日の丸=大日本帝国ってことかしらね。いまのアベ政権下なら大いに有りうる。つまるところ、現体制にベッタリ盲従しないことには、生活が成りたたないデザイナーに悲哀を感じてしまうな。いままでに自国の国旗を、世界オリンピックのマークに使っちゃった例は、前の東京五輪(デザイナーは亀倉雄策)くらいで、他国はそんな馬鹿げた国威発揚デザインなんぞしたことないでしょう。今回は世界オリンピックの場を借りて、戦争のできる「日本をとりもどす」アベキャンペーンに利用されている。それがパクリ疑惑のせいでケチがついたといったところ。これ以上デザイン問題でダメージをうけたくなかったら、三波春夫の「東京五輪音頭」を復活させればよい。仲良く歌い踊れば、平和を愛する日本人らしくていいじゃないか。これ一発でダメージは払拭できると思うのですが。

くずきり

osamuharada2015-08-05

いふまいとおもへどけふのあつさかな、とでも言いたくなっちゃうなか、猛暑お見舞い申し上げます。とくに同世代(老人)のおかたは、おたがい熱中症対策が肝心ですよね。
島では嫌いなクーラーはつけなくてすむけれど、都会にいたら無理だったでしょう。日陰と海からの風通しを工夫して、何とかヤリクリしています。あとは短い昼寝に、煎茶の茶ウケの「くずきり」(写真)にハマっています。氷水で冷やした葛きり(奈良県吉野産)は、のど越しに氷よりも涼感があるようです。つける黒蜜(沖縄産黒糖)もスッキリと甘い。
この記録やぶりの連続猛暑と夏休みの間、人々が暑さで何事も考えられなくなりそうな時期を見はからい、アベ独裁政権は「粛々と」(米国の御下命により)コトを運ぶつもりでいるらしい。「まさに」とアベの口真似をするなら、「まさに、鞭声粛々夜河をわたる。ではありませんか」
これは頼山陽が、有名な「川中島の戦い」を詠んだ詩の一節。上杉謙信武田信玄の機先を制するべく、夜中に山を下って、敵の寝ているすきを狙い、馬にあてる鞭の音(鞭声)も静かに、こっそりと夜の千曲川を渡って進軍したという、考えたらズルい戦略なのでした。まさに「寝首をかく」とでもいうことでしょうか。
小学生のころ、同級生 E 君が「べんせい〜しゅくしゅく〜う、よるかわを〜わたる。」と爺さんゆずりの詩吟を得意としていたのを思い出します。子供には意味不明でしたが、いまアベ政権下で身を以て体験しています。敵はこの八月をしおに、粛々(こっそり)と夜河を渡るのでしょう(戦争法案と原発再稼動)。鞭声(辺野古)のほうは今月だけ静かにさせておけばよい…。言うまいと思えど今日もまた。    葛きりの器は谷道さんの吹きガラス→http://osamuharada.tumblr.com/
    夏 の 夜 の ふ く る す べ な く あ け に け り   万太郎

今日のデザインノート

osamuharada2015-07-30

東京のオリンピック運動会に興味はまったくないけれど、こんどのエンブレムデザイン盗作疑惑には、同業者としてちょっとだけ気にかかる。グラフィックデザイン著作権だの商標権なんかの争いごとは、ぼくのごときキャラクター屋にしても、ごく身近な問題ではあるわけね。こっちのほうはスケールが小さすぎて比較にならないが、法律的には同じ問題ってことになるでしょうね。
パクリかどうかは著作権の問題になるのだけれど、そもそもこの判定はすごく難しい。それに両者とも突出した個性のようなものがなくて、どっちも平凡でありふれたデザイン(とぼくには見える)だから余計に難しくなるかもね。文字のフォント(書体)だって、両者ともに同じ有りものデザインを使っているようだしね。ただしこの際、好きか嫌いかは問題にはならないのですよ。良きも悪しきも、芸術性(あるとすれば)も関係なし。似てるか似てないかだけのこと。
しかしあのベルギーの劇場がエンブレムの商標権を登記して持っていたら大問題になるでしょう。五輪側が何か物をつくって売ろうなどとするときには、ベルギー劇場側と訴訟が起るかもしれませんね。日本でも、よく不正競争防止法ってので争われている案件。あのデザインで、東京五輪Tシャツとか、五輪バイクとか、五輪饅頭かなんかの商品をつくって売ったとしたら、商法上は不正にあたる。ただ抜け道は、非売品のポスターだったらOKかもね。そもそも宣伝用のポスターデザインには著作権も何もはじめから無いからね。
いずれにしてもこの問題、勝っても負けてもダメージだけは残ることになりそうですね。まず例の生ガキ競技場デザイン問題で失点、次いでエンブレムデザイン盗作問題でも失点、これじゃデザイン界の金メダルは遠のいていきそうだな。どうでもいいけど、こんなことに税金を無駄に使われているのかと思うと腹立たしい。オリンピック好きな東京人と、電通&博報堂からだけ税金とれ!なんてね。

森本美由紀 展

osamuharada2015-07-24

1980年代のはじめごろ、オサムグッズのデザイナーを募集していたときに、若き日の森本さんはぼくの事務所に面接にこられた。まだ岡山から東京へ出てきたばかりの学生さんだった。デザインの勉強も仕事もしたことがないという。デザイナーは無理そうだなとは思ったが、作品ポートフォリオを持ってきていたので一応見てあげることにした。デザインは一つもなく、女性を描いたスタイル画だけだったが、しかしこれが実にうまかったのです。二十歳くらいでこれだけ描けるんだったら、デザイナーなんかにならないで、もう絶対イラストレーターになったほうがいいよ、と勝手にぼくは決めつけてしまった。あとで聞いてみたら森本さんは半信半疑だったらしいが、ぼくはすっかり確信していて、しかもちゃんとそれが後に的中したのでした。ものすごい眼力でしょ。後年パレットクラブスクールで講師をしていただくようになったので、ぼくは会うとよくその自慢話をしたが、森本さんはちょっと恥ずかしそうに微笑むだけだった。
この展覧会にあわせてか、森本さんの作品集も出版されている。岡山に帰郷されてからのアトリエ紹介ページの小カット、窓辺に猫のオブジェと猫の写真が飾ってある。よく見るとその写真のほうは、築地パレットクラブのパッサージュ(自称)に住んでいた野良猫のホオズキちゃんではないか。胸をつかれる思いがした。二年前の森本さんが亡くなったころに、ホオズキちゃんも息を引きとっていた。
森本さんは、イラストレーターは職人である、ということではぼくと同じ考えの人だった。個性よりもイラストの持つ時代性や客観性を好むタイプ。森本美由紀は優れて職人技の人でもあった。生き生きとした筆使いにそれが現われている。まだイラストが躍動的で面白かった時代を、楽しみながら過ごせて幸福だったと思う。
   弥生美術館『 森本美由紀 展 』 7月3日(金)〜9月27日(日)   
   http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/

今夏の防暑計画

osamuharada2015-07-17

クーラーが苦手なので、島ではいつも風通しのよい部屋で猛暑をやり過ごすことにしています。樹木の間を通りぬけてくる海からの風は、木の葉が水冷式ラジエターになってくれるせいかヒンヤリとしている。それでも直射日光がさす窓辺周辺は、かなり暑くなるので、去年までは外に葦簀(よしず)を立てかけて日光を遮ってきました。
今年の六月頃から、くだんのリビングダイニングでは「事前措置」として、庭の柱へ勝手にからみついていた蔓草(つるくさ)を、軒下から左右に引き延ばしてみた。麻紐を張ったところに、蔓草をからませておくだけのことだけれど、みるみる成長して、ちょうどよい日除け棚をつくってくれました。これで真夏のギラギラ日光を室内に侵入させない「専守防衛」が可能になる。太陽を敵にまわし、外に出てお友達と一緒に闘いを挑むような「集団的自衛権」なんぞ必要ではない。何もしなくとも自然の蔓草がやさしく守ってくれている。しかもただの雑草だから「防衛費」もかからない(アベ総統閣下のせいで言いまわしが変になってきた)。
風情のある葦簀も好きだけれど、あれは風が強いと吹き飛ばされるから、天気予報を気にしながらの出し入れが結構めんどくさいのです。しかも葦簀は二、三年使うとボロくなる。蔦草のほうは雨にも風にも強いし、秋冬に枯れ葉が落ちても、また次ぎの初夏になれば再生してくれる。見るからに涼しげで、緑陰は美しくもある。名も知らぬ蔓草といえども、うまく自然利用すれば役に立っちゃうもんですね。あとは水を飲んで熱中症に気をつけましょう!
(拡大写真)→http://osamuharada.tumblr.com/   
葦簀の良さも捨てがたいけど…。→[id:osamuharada:20080801]

深夜のテニス観戦

osamuharada2015-07-13

ついに大政翼賛 NHK が行った世論調査でさえも、アベ不支持は決定的になってきたようだ。当然ながら違憲のアンポ法案なんてものはほとんど反対されている。アホノミクスで無理しての2万円台なんて、ギリシャと中国のおかげでぶっ飛んでしまったしね。
それでもなおマインカンプ(我が闘争)の、厚顔無恥なアベなど見たくはないから、テレビはもっぱらWOWOWだけをつけています。昨夜は映画のほうではなく、テニス実況中継で爽快気分が味わえた。ウィンブルドンで、贔屓のジョコビッチフェデラーを破って優勝。最近日本のテニス報道はニシコリ君ばかりだからウンザリしていたが、今回は途中で消えてくれたので、久しぶりに二大スターの素晴らしい決勝戦を存分に楽しめました。
本場英国ウィンブルドンでは観客席の顔ぶれもまた嬉しい。映画俳優ではケイト・ウィンスレットブラッドリー・クーパーが、フェデラーを応援していた。ベネディクト・カンバーバッチも観戦していて、こちらはジョコビッチのファンだったらしく、優勝後の控え室ロビーでもカンバーバッチは直立不動で待っていて握手をもとめた。二人とも若いのに礼儀正しく爽やかだ。ワタシは思わず TV 画面に向かって記念撮影をしてしまったのだった(あくまでも自分用)。好きな役者と好きなテニスプレーヤーのツーショット。そのあと廊下の奥で一人たたずむ可愛いらしい若妻を、ジョコビッチはグッと抱きしめた。まるで映画のラストシーンだよね。
しかしスポーツ放送のアナウンサーや解説者は映画を知らないのか、せっかく世界的大スターたちが画面に写っているというのに、ぜんぜん気づかないらしい。観客席のカンバーバッチはサングラスをしていたけどすぐ分ったぜ。映画のWOWOWなんだから、もうちょっと気のきいた司会者はいないのかね。テニス観戦もエンターテインメントだってこと忘れないでほしいです。
テニスのこと書いたのは久しぶりだなと思って検索したら七年も前のことでした。→[id:osamuharada:20080604]
TV大画面で見ているYouTubeでは、いまコレがエンターテインメントとして面白いな。→ https://www.youtube.com/watch?v=WSroOlr3KyQ

今週もリビングダイニング

osamuharada2015-07-07

長梅雨ですね。またリビングダイニングにて「引きこもり」中です。雨のなか外に出るのが億劫になり、ときどきルームランナーで歩き、ラジオ体操第一第二なぞやったりしています。風呂は午前中に入る長湯が好きで、夜は外国映画鑑賞。アトリエでは美術と歴史への興味も尽きませんが、「小人閑居して不善をなす」。仕事で働きたくなんかないし、世の中で何のお役にもたちません。ついBlogでひとりごと。
鬱陶しい梅雨どき、うっかりパソコンで国会中継など見たら、余計うんざりするから見たくなくなる。とにもかくにもアンポ法案を強行採決に持ってゆこうとするアベが見苦しいですよね。強引なる川内原発再稼動も狂気というべきか。こちらはアソーの利権(九州電力)がからんでいる。そしてその薩長政権の金儲けを覆い隠すかのように、マスコミは殺伐とした三面記事ニュースばかりをしつこく流す。新幹線で焼身する人もいれば、自宅に放火して子供を死なせる自衛隊の父親もいる。政治行政にしても、これが大のおとなのすることなのか?と疑うようなことが、世間ではごくフツーに連続してゆく。この長雨もまだ続くのかな。
  人 知 れ ず ふ け て 涼 し き 灯 な り け り  万太郎
自分だけが気に入っていれば良しとするリビングダイニング(写真)→http://osamuharada.tumblr.com/