台湾外食事情

osamuharada2014-03-15

台北でお腹がすいたら、何を食べたらよかろうか、台湾通の知人に聞いてみた。まずオススメは「夜市」の屋台料理だった。毎晩あいていて、午前2時頃までやっている。台北の人々は、家で自炊する人は少なく、朝昼晩まで屋台の外食が多いらしい。街中どこにも屋台が出ている。日本からの観光客でも、とくに〈B級グルメ〉好きのめざすところが、この屋台なのだろう。
有名な『寧夏夜市』の人混みの中を歩いてみたけれど、強烈な匂い(台湾臭と命名)に襲われて閉口した。これは揚げ物用の脂肪油と、化学調味料の匂いのせいかもしれないな(両方とも苦手)。ちらっと目にしたのでは、「鶏の足」(股肉じゃなくて、三つにわかれた爪先部分)の揚げ物がずらりと並んでいた。「おでん」に似た、しかしもっと混沌とした鍋物もあり、よく見ると大きな腸詰などがまぎれている。居酒屋のモツ煮込み(苦手です)に近いのかな。名物「臭豆腐」というものは、ほんとに死ぬほどクサい。皆々いろいろオカズを買って、道路上のテーブルに持ち寄り、お粥や麺類にのせてうまそうに食べている。酒を飲む人はほとんどいない。あの台湾臭さえなければ(テレビ画面で見るように)、けっこう楽しそうに見えるのだが、ぼくはパスした。
どのガイドブックにも書いてあるのが台湾名物「小籠包」ということで、世界中にフランチャイズ店がある有名な『鼎泰豊』(写真)へもいってみた。これもB級グルメですね。すでに外で順を待つ人が大勢いる。名前をつげて予約番号をもらう。電光掲示板に20分待ちと出ているので、すぐ隣りにある本屋さんをのぞいて待つ。近藤誠先生のベストセラー『医者に殺されない47の心得』の中国語版が出ていた。なかなかフェアで健全な書店だ。さていよいよ番号を呼ばれて入店。よく働くコックたちのいる厨房はガラス張りで、みな白衣にマスクで清潔そう、これなら安心だな。客の半分は日本人のようだ。いよいよ本場の小籠包。やや小ぶりで、ちょっと冷めていて、アツアツ感は期待はずれ。豚肉は硬めで脂がのらずジューシーとはいえない。ネットでは絶賛されていたが、はっきり言えばたいしたことはない。名物に旨いものなしとかや。肝心の豚肉そのものが旨くなくっちゃ小籠包もダメだよね。沖縄の紅豚やアグー豚に遠く及ばなかった。ついでに、大瓶しかない台湾ビールは、水で薄めたような味だ。この店の雰囲気だけはとても良かったのにね。
 B級は素材にモンダイありなのだと悟り、自然食品&レストラン『天和鮮物』へ赴く。東京にもないような、モダン・インテリアのかっこいい店だ。BIOの乾物や加工品は充実していて楽しいが、有機の生鮮野菜類は、ほんのちょっとしかない。まずはここの名物だという野菜ジュース「酵素精力湯」(名前が凄い)を飲む。ジュースと思っていたら、キャベツ主体の野菜サラダに薬膳の薬味を加え、ミキサーにかけて細かくきざんだようなものが出た。大きなコップに入っているが、飲みこめないのでスプーンですくって食べるしかない。奇妙な食感だが、ただのキャベツ味以外の何ものでもなかった。これもある日本の雑誌では絶賛されていた。どこがヨ? この店の食事用カウンターのほうは、なんと「しゃぶしゃぶ」専門とある。長い木製の立派なカウンターには一人ずつ専用の電磁調理器が埋め込まれていた。この上に一人鍋が置かれるのだろう。先に肉売り場の冷蔵庫にある肉を調べてきたが、沖縄の山城牛や本部牛に遠く及ばない。ここではBIOの加工食品あれこれや緑茶を買って、しゃぶしゃぶはパスした。
本格的な三ツ星の中国料理の店へもいってみた。今度は普通にグルメそうな店を選んだ。フカヒレと豚の角煮が美味いと評判の高級店。しかしこれなら銀座や赤坂・六本木に昔からある中華飯店と大差ないなと思った。おまけに値段も大差がないのだった。おつぎは星で選ばず、やはりオーガニック素材の中華飯店『東雅小厨』へいってみた。庶民的で感じがいい。素材の説明が詳しく丁寧で安心できる。味付けは食材本来の旨味を大切にして、シンプルでやさしい。化学調味料フリーだしね。オーナーは、身体によい〈食〉の研究家でもあるらしい。ここでやっと気にいった店にめぐりあえました。あとはやっぱり故宮博物院の『三希堂』がまあよかったかな、といったところ。