シド・ホフの絵本

osamuharada2012-03-24

二年前に来たときのホノルルには、全米2位の大型書店チェーン BORDERS があったが、去年二月に倒産してしまった。カフェ SEATTLE’S BEST COFFEE も併設されていて、ゆったりとした居心地のよい、ハワイ最大の本屋さんだったのになァ、残念。ことに児童書がズラリと揃っていて、現代アメリカの子供たちに人気ある絵本を一目で見渡すことができた。ボーダーズ書店は、アメリカ国内だけでも499店舗もあったそうです。
今年はしかたなくアラモアナにある、全米チェーン1位(こちらは777店舗ある)の BARNES & NOBLE のほうへ行ってみた。外は人出が多い場所なのに、豪華な書店内はガラガラだ。ここもリーマンショック以来、もはや危機的状況といわれている。大型書店もただの金融投資物件にすぎなくなると、こうなっちゃうんだよね。日本の大型書店もまったく同様で大変にマズい状況だけれど。
本屋のことはともかくも、嬉しかったのは、そのバーンズ&ノーブル書店に、ぼくが好きな SYD HOFF の絵本が置いてあったことでした(写真)。半世紀も昔の人気絵本が、まだ版を新たにして出版されている。大判でハードカバーなのに、10$もしないとは偉いよね。シド・ホフ(1912〜2004)は、今年でちょうど生誕100年になるんだなあと思って、さっそく公式ホームページを見たら、ちゃんとここに書いてありました。→http://www.sydhoff.org/ 
ニューヨーク・ブロンクス生まれのユダヤ人。十八歳で雑誌『ニューヨーカー』に Cartoon(一コマ漫画)を描いてデビューした漫画家です。後にそのカートゥン・スタイルの絵と文を駆使して、子供向けの絵本もたくさん描くようになる。もともと一コマ漫画の出だから、絵本の内容もノホホンとした感じで、漫画的ビジュアルにして明朗このうえない。古き良き時代のアメリカを彷彿とさせてくれる。
写真左は、1000万部を超えるロングセラーの DANNY AND THE DINOSAUR ・邦訳「きょうりゅうくんとさんぽ」のページです。初出は1958年。 右の表紙は邦訳されてない SAMMY THE SEAL で、1959年に出た、オットセイのサミー君が体験する楽しいお話。いずれもアイデアが漫画的でありながら、市井の生活感に満ちあふれている。心優しくて前向きで、子供たちに生きる歓びをいまでもちゃーんと伝えているのです。〈2010 edition・Sandy Creek・378 Park Avenue South New York〉
同じように‘50年代アメリカ漫画のスタイルで子供の絵本を書いた人に、あのH.A.レイ(1898〜1977)がいますね。いまでも大人気の CURIOUS GEORGE・邦題「おさるのジョージ」の作者。この人もまた、ドイツから大戦中にアメリカへ亡命したユダヤ人でした。戦後のニューヨークで活躍した漫画家や絵本作家、イラストレーター、グラフィックデザイナーたちに、ユダヤ人が圧倒的に多いというのも面白い。ソール・スタインバーグも、ソウル・バスも、ポール・ランドも、プッシュピン・スタジオの面々もみなユダヤ人。
アメリカの人口(約3億)のうち、ユダヤ人はわずか2%ほどで、その半分はニューヨークにいるという。JEW YORKといわれる所以ですね。ユダヤ人たって色々だけれど、金融支配や、原爆つくった連中もいるし、パレスチナ人(難民500万人)を追い出して勝手にイスラエル建国しちゃったアシュケナージユダヤもいるから、善悪ともに一筋縄ではいかないわけですね。