「今人古心」印

osamuharada2007-07-15

四十才のときに、京都姉小路麩屋町の、富岡鉄斎ゆかりの古い画材店『彩雲堂』で作ってもらった竹材の印です。鉄斎の画賛にあった「今人古心」(こんじんこしん)から勝手にとって、彩雲堂専属の篆刻家に彫ってもらいました。竹の切り口がそのまま印形になっています。「今人古心」とは、今のひと古き心。現代に生きてはいるが古い心をこそ大切にする人と解釈します。若い頃「ぼくの美術帖」に自分なりの日本美術史を書いた後から、この鉄斎の言葉は美術に関してのぼくのモットーになりました。なにしろ縄文時代にまで遡るほどの古き心を持ってるつもりですから。で、この印を後生大事に持っているワケ。 下にある本は、鉄斎の自刻印や所有印を三百以上選び編纂した『魁星閣印譜』二巻です。写真左上にあるのが鉄斎自刻の「今人古心」印。  ところでこの竹印を自戒のために作った頃から、明治以降現代までの日本美術史は教科書通りに受け取れなくなってきたのです。それ以後その理由をぼくなりに調査する事がヘンな趣味になりました。それがまた陰謀歴史研究の始まりでもありました。例えば明治の狩野芳崖横山大観から始まる日本画と自称する絵画の類い。いずれもぼくの古い心には響かない。ただ怪しくていかがわしいだけのもの。もちろん陰謀論を以ってすれば明快にその理由はわかる。今の欧米受け売り日本現代美術などには、何も感じないのではなく、ただ悪寒をのみ感じるだけですが、そこにも裏側の理由はちゃんとある。 民族という言葉はダサくて嫌いだけれど、現代の日本民族から、美術のみならず、古くから持ち続けてきた日本文化のアイデンティティが、今こそ失われてゆく時代はないんじゃないかな。などとこの竹印を眺めながらつくづく思うこの頃。