映画と美術ノート

osamuharada2015-12-01

好きな【女優で観る】:英国のヘレン・ミレンの新作 WOMAN IN GOLD・ 邦題『 黄金のアデーレ・名画の帰還 』を観ました。好きではないが クリムト の絵がテーマになっているので、さらに興味津々。初日に予約して入った映画館はガラガラ(観客5人)でした。女優といっても70歳だし、画家クリムトを知ってる人も少ないから、まぁしょうがないかな。
エリザベス女王を演じたヘレン・ミレンが、こんどはオーストリアからアメリカへ亡命したユダヤ人の役。ヘレンは黒い瞳のカラーコンタクトで、セレブ・ユダヤ人女性に変身していた。映画のストーリーは実話だけれど、相も変わらぬ〈 ホロコーストもの 〉。ナチスに奪われた クリムト の絵画を取り戻した、というユダヤ人以外にはどうでもいいような話でした。それをあたかも「美談」のようにいわれても、あんまり感情移入できないのね。せっかくのヘレンの名演技がもったいない。
【絵画で観る】:それより冒頭のタイトルで、クリムト が「アデーレの肖像画」を描いているシーンが印象的でした。絵に金箔を貼るところから始まる。その肖像画のコスチュームを見て驚嘆した。着ているドレスの上から下まで、三角形ピラミッドに目玉の図柄がズラーっと並んでいるではないか。フリーメーソンのエンブレムや、アメリカ1ドル札の裏面にあるピラミッドに目、と同じく不気味なシンボルマーク。この意味するところが解れば、妻アデーレの肖像画クリムトに描かせたパトロンの正体も想像がつくでしょう( Conspiracy 好きのかたはご自分でお調べくださいね)。
この絵は、めぐりめぐって現在ニューヨークの「ノイエ・ギャラリー」にあります。化粧品会社の社長ロナルド・ローダー氏が、ヘレン・ミレン演じたユダヤ人女性から、なんと156億円で購入(2006年)。実はこの社長さん、「世界ユダヤ人会議」の議長でもある(どんな組織かこれもご自分で調べてね)。そして今年、ヘレン・ミレンはその「世界ユダヤ人会議」から特別名誉賞なるものを受賞していたのです。美術も映画界も、ほとんどユダヤ人が支配しているわけですから、この映画も最初からアカデミー賞ノミネートを狙って作られたといえるでしょう。
そういえば、ついこないだ観たばかりの、ジョージ・クルーニー監督・脚本・制作・主演の映画 The Monuments Men・ 邦題『 ミケランジェロ・プロジェクト 』も、同じくヒトラーナチスがフランスから強奪した美術作品を奪い返すストーリー(実話)でした。好きな女優のケイト・ブランシェットと、アクションがうまいマット・デイモンが出演しているので、わざわざ映画館へ足を運んだのでした。ところが、あまりにつまらない映画だったので、観たことさえ忘れていた。今ことのついでに思い出しました。同じような話なら、むかし観た『 大列車作戦 』(1964年)の方が、エンターテインメントとしても、はるかに面白かったな。こっちは監督がジョン・フランケンハイマー。主演バート・ランカスターのアクションもので、フランス女優ジャンヌ・モローが出演していた。これもついでに思い出しました。
結局はユダヤの御用絵師だった クリムト について、前にちょっと書いていました。→[id:osamuharada:20110725]
ヤツガレの、好きな女優で観るリスト。→[id:osamuharada:20130530] (後の追加分あり)