映画女優ノート

osamuharada2015-10-28

東京の映画館で、新作映画を「好きな女優で観る」したいなあと思っていたら、タイミングよく、その名も『アクトレス 女たちの舞台』が始まっていた。原題は ” SILIS MARIA ”。最近気に入っている18歳の【 クロエ・グレース・モレッツ 】ちゃんと、これも最近になって好きになってきた 51歳のフランス女優【 ジュリエット・ビノシュ 】が出演。二人も好きなアクトレスが出ているとは、これじゃ見逃せない。
クロエちゃんは、お子様向けアクション映画『キック・アス』のヒットガール役 (当時11歳)で人気を博した。子供なのに口汚くファックだシットだのと啖呵を切るところがカッコよくてしかも可愛い。タランティーノ映画『キル・ビル』を観てアクションの勉強をしたそうだ。その後 スティーブン・キングのホラー小説映画化『キャリー』のリメイク版で主役。狂信的母親役の演技派ジュリアン・ムーアとの、丁々発止の掛け合いがよかった。いよいよ将来が期待できるなと思っていたら、去年はデンゼル・ワシントン主役のアクション映画『イコライザー』で見事な「娼婦」役を演じきった。この名演技でヤツガレもクロエちゃんファンになった。すでにハリウッドの若手スターの座についている。そして今回は自身をパロディ化したような役柄を演じて、ますます磨きがかかってきた。
やはり若くして大スターになったビノシュだったが、ぼくにはどうも昔の出演映画自体が好きになれなくて、あまり興味を引かれなかった。それが『マリー、もうひとつの人生 』(日本ではWOWOWのみで公開 )を観たら、ビノシュが年齢を重ねてコメディもいけちゃう、優れた大人の女優になっていたと再発見したわけ。このコメディでは一人二役 (主人公は記憶喪失したため二重の人格を演じ分ける )で、ユーモア漂うヒロインを楽しみながら演じている余裕すら感じさせた。客感的な「笑い」にフランス伝統の esprit がある。
コメディといっても、日本の喜劇とはちょっと意味が違うのね、「人間喜劇」ともいわれる、あの「コメディ・フランセーズ」のほうのコメディね。モリエールを嚆矢とするシニカルなフランスの伝統演劇。ちゃんとその古式ユーモアを現代に再現できる女優さんとして、ビノシュは成長を遂げたようだ。今回の映画『アクトレス 女たちの舞台』でもその喜劇性が表出している。監督がもうちょい「笑い」のセンスさえよければ、女優たちも特異な才能をもっと発揮できただろうに、それが残念。虚実いりまじった面白い風刺劇にしては、それこそフランス式エスプリが不足している。これは監督と脚本のせいだろう。しかし女優たちは活き活きとしていて素晴らしい。もう一人の共演女優クリステン・スチュワートは、以前の大人気ヴァンパイヤー映画からは一皮むけて好演、これまた大人のユーモアを表出させて見事な写実的演技。女優それぞれの芝居を楽しむには100点満点の「アクトレス映画」でした。