台湾のTATTOO国

osamuharada2015-02-17

日本は台湾と国交がないそうだ。北朝鮮パレスチナとも国交がない。日本政府が国家として認めてやらない相手とは、国交をしないらしい。台湾の場合は、日本が中国(中華人民共和国)と国交があるため、中国が認めない台湾(中華民国)とは国交なぞしない、ということになっているのだろう。日本政府(官僚と政治屋)は、中国さまのほうにヨイショしているわけね。しかし、国交があろうと無かろうと、パスポートさえあれば日本人は誰でも台湾へ行けちゃうし、台湾人も日本は受け入れている。貿易だって自由にやっている。これは「本音と建前」というだけのことなのでしょう。
去年もすごかったけれど、今年もまた台北は中国人観光客でごったがえしていた。それで故宮博物院と同じくらいに混んでいるのかな、と覚悟をしていった【 国立台湾博物館 】。ローマ風の列柱が目を引く豪壮な建物で、入館してみたら閑散としていた。さいわい団体客もここまではこない。特別企画展は、台湾の原住民族のうち、アタヤル族とパイワン族の衣装や工芸品。そして台湾原住民族の全体に及ぶ、入れ墨のデザインについての考察。各種族ごとにそれぞれの図案がある。前から見たかったものが、いきなり目の前に展示されているので興奮した。そして民族の持つ強烈な美意識に圧倒されてしまった。
むかし台湾は、中華風にいえば「文身國」、つまりTATTOOの国だったわけです。「黥面文身」の倭人たちとも遠い親戚みたいなものだったでしょう。展示室のビデオ上映では、まだかろうじて生存しているTATTOOのある原住民族(老婆たち)のナマ映像が素晴らしかった。本にもDVDにもなっていないのが残念。また民族衣装に並んで、現代の子孫たちがその衣装をまとった等身大写真シリーズも素晴らしい展示だった。若い人たちが着るとさすがにカッコいいではないですか。顔立ちも漢民族とはぜんぜん違う。これこそが本物の台湾人なのですよ。(上の写真は民族衣装を着たいまのアタヤル族)
現代は台湾人の98%が中国人(漢民族)で、もともとこの島国に住み続けていた原住民族は、たったの2%しか残っていないそうだ。大昔はオランダの植民者を追い払って、中国(清)が占領し、さらに日清戦争に勝った大日本帝国が奪い取って植民地にした(50年間も)。太平洋戦争で日本が敗戦して台湾をとりあげられると、こんどは毛沢東の共産軍に追い出された国民党の中国人たちが、中国本土から逃げてきて台湾に住み着き、それ以来「中華民国」を名乗っている。そのとき北京の紫禁城から持ち逃げしたものが、台北故宮博物院にある中国美術なのですね。ヤレヤレ…。
どおりで、台湾をさんざん植民地支配してきた中国人も日本人も、【 国立台湾博物館 】の「原住民族展」だけには興味を示さないわけだ。無意識的に「罪の意識」がはたらくのかも。日本が植民地支配したときに原住民族のTATTOOを禁止したらしいが、民族としての誇りを持つ人たちはそれでも入れ墨をして抵抗したのでしょう。しかしそれもまた現代は失われてゆく。
国立台湾博物館で撮った写真は→ http://osamuharada.tumblr.com/ ビーズやトンボ玉の装身具はパイワン族の伝統。機織が得意なアタヤル(タイヤルともいう)族の民族衣装とそれを着たTATTOO女性写真。