私はチャーリー

osamuharada2015-01-18

前にフランスの風刺漫画家シネについて書き、NHK紅白歌合戦での桑田圭祐さん「チョビひげ」事件についても書いたばかりですが、パリの風刺週刊誌 CHARLIE HEBDO『シャルリー・エブド』 が襲撃され、風刺漫画家たちが殺害されたニュースには驚いた。
この雑誌名の CHARLIE は、チャーリー(英語読み)・チャップリンからとったそうです。そのユーモアの奥にある社会風刺性へのオマージュなのでしょう。チャップリンの映画『独裁者』では、チャーリーのチョビひげと、ヒトラーのチョビひげをダブルイメージで使い分け、辛辣なナチス批判をしている。
このテロ事件直後、ネット上に Ju suis Charlie 「私はチャーリー」のロゴをグラフィックデザイナーが投稿し、これが世界中に広まった。それがきっかけか、犠牲者を悼み「表現の自由」を訴えるデモ行進がエスカレートした(全国合計370万人)。仏大統領だけでなく、イギリスやドイツ、イスラエルの首相までが大行進に参加して、イスラム過激派(イスラム国も含む)に対する、どうやら宣戦布告をしたらしい。ニューヨーク9.11テロのときに、息子ブッシュが「これはパールハーバー真珠湾奇襲攻撃)だ!」と叫んで、テロ事件から強引に中東戦争(父ブッシュから継承)へと発展させていったことを思い出させる。
しかしこんどの事件の犯人兄弟二人は、過激派には違いないけれど、アルジェリア系フランス人だ。フランスが百年以上も植民地支配をしていた北アフリカアルジェリア。犯人はそのアルジェリアからの移民の子孫ということになる。一応1962年にアルジェリアは独立してはいるけど、天然ガス、石油、ウランなどの産出物を牛耳っているのは今もフランスで、つまりアルジェリアは経済的植民地のままなのでしょう。そしてフランス国内に移民は数百万人もいるわけだから、このテロ事件は、フランス国内問題の、いわば内戦ともいえるのではないだろうか。現在アルジェリアは99%がイスラム教のスンニ派だそうだ。なかにはあのアル・カイーダもいる。スンニ派は、まず反帝国主義を標榜している。そして反共、反イスラエル、反米だ。
前に、1900年パリ万博の EXPOSITION COLONIALE「植民地展覧会」について書いたことがあります。なんと、そこには日本(ときに明治33年)も「植民地」として展示されていたのですよ ! 中国「清」、インド、東南アジアの国々、そしてアフリカと一緒なのでした。このイラストマップをよく見ると、フランスの植民地アルジェリアの展示場は、そのコロニー展覧会場の中央通路左右に置かれているのです。誇らしげに堂々と展示されている。このマップを見るたびに、歴史を正確に読みとらないと、現代起きていることの問題点が何も判らないままなのでは、と思うのです。
このテロ事件に、独裁者アベまでが「言論の自由報道の自由に対するテロを断じて許さない」と言っていたのには笑えた、Black Humor 。 そして外国にも国内問題にも、ほとんど関心を持たない大衆国家日本では「衆寡敵せず」。どうせ誰も聞かないから、何を言ったって自由ではあるのだろう。風刺漫画家も需要がないので出てこないわけだ。
1900年パリ万博→[id:osamuharada:20110725] 続き→[id:osamuharada:20110724]
そのパリ万博の地図と写真はこちらに(植民地日本館もあります)→http://osamuharada.tumblr.com/