書斎日誌

osamuharada2014-10-04

ようやく秋らしくなりましたね。島の書斎から眺めると、山から海にかけて、木の葉がグラデーションで上から黄変してきました。日差しはやわらかく、空が高くなったような気がします。昨日までメンテナンス工事で島の塗装屋さんが来ていたのが終わり、またアトリエ周辺もひっそりと静まりかえりました。これでお絵描きと読書に集中できそうです。
島に一軒だけある小さな本屋で、新刊の村上春樹 編・訳『セロニアス・モンクのいた風景』を買いました。和田誠さんの表紙絵を見て、すぐにそれが安西水丸さんの得意噺を描いたものだなと気がついた。1960年代後半に、水丸さんがニューヨークのジャズクラブで、セロニアス・モンクに煙草を一本あげたというエピソード。水丸さんと、ニューヨークやジャズの話をしだすと必ず出てくるご自慢の話題で、むかしから何回も聞かされていたから、和田さんのイラストレーションを見たときにはデジャヴュのようでした。
しかもモンクにあげたその煙草は日本の「ハイライト」で、和田さんが若きデザイナー時代にパッケージデザインしたという話も、水丸さんのオハコになっていたのでした。和田さんの描く表紙絵は、水丸さん独特の色鉛筆タッチを真似て、追悼の意をこめているようです。村上春樹さんの「描かれずに終った一枚の絵」という一文を受けて描かれた絵にもなっています。
和田さんゑがく水丸さんタッチの挿し絵を眺めているうちに、今頃になって、やっとぼくにも水丸さんはもういないんだ、ということが実感できるようになりました。書斎で久しぶりにモンクのピアノを聴いています。

セロニアス・モンクのいた風景

セロニアス・モンクのいた風景

去年の「書斎日誌」→ [id:osamuharada:20130525]