アトリエ日記

osamuharada2014-07-11

4Kテレビを、絵を描くアトリエに置いてみたときにはデザイン的にも違和感があったので、アトリエらしくテレビ&スピーカーの回りに、川端先生の絵を掛けてみました。これだけでもなんとなくアトリエらしくなって、まずは落ちつけるスペースになった。
絵とは別に展覧会の案内状(この写真)も飾ってみた。1967年の Betty Parsons Gallery での川端実展。この大判のカードは'90年にニューヨークへ行った時に先生から直接いただいた。ぼくの宝物。
この個展と同じ頃の、黒と黄色のスタティックな抽象画のシリーズは、1969年に初めてニューヨークの先生宅へ伺ったときに、居間の壁にも掛けてあった。その巨大な黒い楕円と黄色のアブストラクトの下、ソファーに座られていた先生の姿を見て、強い感動をおぼえた。絵画と画家がひとつとなって空間を支配している。ぼくには、モダニズムの洗礼を受けたにも等しいことだった。ということなんかを思い出させてくれるもの。
その横には、最近手に入れた先生の黒一色(紙本)のアブストラクト。多分、ニューヨークへ移住される直前の'50年代後半の作品。渇筆のスピード感は、まるで鉄斎の水墨画を思わせる。そのまた横には、前から持っていた先生の黒にくすんだ黄色地の絵(キャンバス)をかけさせてもらいました。アトリエには場違いだったテレビも、なんとか工夫すれば置いても気にならなくなっちゃうもんですね。
先日、ある若者向けの男性誌からアトリエの取材を頼まれた。知らなかったが「居住空間学」というテーマで続いているインテリア特集らしい。しかしぼくには島のアトリエで「居住」しているという自覚がまったくないので、丁重にお断りさせていただいた。ぼくにとってアトリエは、非日常的で、「美術」について思いをめぐらす特異な空間だと考えているのです。というわけで4Kテレビもハイビジョン・リマスタリングされた古い映画も、新しい「映像美術」として鑑賞をしています。