1969年ニューヨーク

osamuharada2014-06-26

イラストレータ小林泰彦さんの本二冊が文庫化されました。『ほんもの探し旅』と『ヘビーデューティの本』。いずれも登山やハイキングの専門出版社である山と渓谷社の「ヤマケイ文庫」からです。最近は「山ガール」と称され若い女の子の間でも「山」がブームになっているらしいし、日本人の山好きには古くから歴史がありますね。泰彦さんの本は、これからもスタンダードとして読み継がれることでしょう。この新刊情報をもっと知りたくて、YouTubeを探してみたら、小林泰彦さんご本人へのインタヴューがありました。これは、一ファンとしては永久保存版です。
泰彦さんの仕事場からの中継らしく、話す順にやがて脇から色々な参考資料の山用品やら衣服が登場して実に楽しいのですが、画面では最初っから机の上に【 WHOLE EARTH CATALOG 】と【 DYLAN 】の本が置いてあります。泰彦さんといえば『ホール・アース・カタログ』の話題は当然なのだけれど、しかし何故か隣りに山と関係のないボブ・ディラン本が置いてあるのが不思議なのでした。最後まで見ていても話題にならないのだから、音楽好きの人にも謎だったことでしょう。
でも、ぼくには何故そこにディラン本が置いてあるのかが、なんとなく理解できたのですよ。『ホール・アース・カタログ』を泰彦さんが初見したのは、1969年の夏、ニューヨーク五番街の「ダブル・デイ」という本屋さんだった、と話されています。ちょっとビックリした。何故ならぼくも1969年にはニューヨークに一時住んでいて、よく通った本屋だったから。ともあれ泰彦さんはニューヨークの本屋でその頃に買ったものとして、ついでに数冊机に並べておいたのだと勝手に推察いたしました。多分ね。写真はぼくも持っていた同じディラン本。中学生の時から憧れていた小林泰彦さんに、もしかしたら45年前のニューヨークですれ違っていたかもしれないんだな、と思うと嬉しくなってくる。
同じ1969年といえば、後で知り合うことになる安西水丸さんもニューヨークで広告会社のデザイナーをされていたし、ペーター佐藤さんは、演劇集団「東京キッドブラザース」の美術担当と役者さんをかねてニューヨークのオフブロードウェイの舞台に立っていた(しかもその舞台のペーターを泰彦さんはイラストルポで描いていた)。ぼくもイラストレーターになる以前のことで、それが偶然みんな1969年のニューヨークにいたのだ、と後でわかったというだけの話です。