黒澤明が選んだ映画

osamuharada2014-05-22

娘さんの黒澤和子著『黒澤明が選んだ100本の映画』(文芸新書)を読んでいたら、意外にも黒澤明は《 可愛い映画が好きだった 》と書いてあった。そしてぼくも大好きな映画、ルイ・マル監督【 地下鉄のザジ 】(1960年・フランス)をあげていたので嬉しくなった。黒澤明なら【 死刑台のエレベーター 】になるんじゃないかなと思っていたら、なんと予想外のZAZIEのほうを選んでいました。
黒澤明が100人の映画監督を選んで、その監督作品の中から選ぶという趣向です。《 父が生前に選んだ自分の好きな映画百本のリストをもとに、添え書きには、傍らで聞いていた父のインタビュー、父と食卓を囲んで語り合ったこと、テレビやビデオを並んで見ながら話し合ったこと、一緒に映画館へ行った帰りの喫茶店で話した内容などを盛り込んでいます。》という羨ましい環境下での聞書。一人の監督につき一作品。
その選集のなかでは、ぼくの特に好きな洋画が他にも十本あった。同じ好み、これだけでも、ますます黒澤明ファンになってしまう。ちなみにぼくが好きな黒澤明作品はというと、全30作品のうち20本くらいが好きで、特に大好きな作品は【 野良犬 】【 七人の侍 】【 用心棒 】【 天国と地獄 】の4つということになっちゃう(ぼくのはどうでもいい話ですが)。黒澤映画ではチャンバラと刑事ものが特に好きだということね。
黒澤明が選ぶ邦画には、正統的なチャンバラはなく、時代劇では山中貞雄丹下左膳餘話 百萬両の壷 】、これってチャンバラというよりモダンな人情喜劇ですね。ほかにもチャンバラの少ないドラマ伊丹万作赤西蠣太 】。落語をもとにした喜劇の川島雄三【 幕末太陽傅 】を選んでいました。さすがですね。そして刑事ものは洋画で、ノーマン・ジュイソン夜の大捜査線 】、ウィリアム・フリードキンフレンチ・コネクション 】、ピーター・ウィアー【 刑事ジョン・ブック 目撃者 】の三作品。確かにどれもいいよなあ。
そして、男っぽい好みのなかに【 地下鉄のザジ 】がある。黒澤明は《 とてもしゃれた作品だと当時思ったね。口笛のメロディーにのって、主人公の子供の目で追っていくんだけれど、この監督は『さよなら子供たち』なんかでも実に子供の使い方がうまいしね。》と語っていた。ぼくもリアルタイムでこの映画を見て一目惚れなのでしたが、当時はヒットもせず、ヌーヴェルヴァーグ好きからも無視されていた。いま見ても洒落ていると思うのですが。和子さんは《 ドタバタ喜劇のようであり、シュールなこの作品は、世の中に出るのが早過ぎたかもしれないと思える。「多分、いまの人の方が、面白く観れるのではないかな」と父は語っていた。》のだそうです。是非いまの人はご覧ください。パリ好きな若い人もね。
ZAZIEと同じく1960年のフランス映画で、ルネ・クレマンの【 太陽がいっぱい 】をあげていた。これもぼくのベストテンに入る映画です。これには《 とても判りやすい映画で、映画らしい映画だと思うし、映画を観始めるのに入りやすい作品だよね。この主人公の気持ち、よく判るでしょ。うまいテンポで進んで行くラストがまたとても良くてね。》とある。ぼくにとっては中学三年の時だったから、まさに映画入門編の映画となった。これもZAZIEも半世紀前の映画だというのに、どれもいま観たって新しいと思えてくるのです。
前に書いた【 地下鉄のザジ 】→[id:osamuharada:20050415] [id:osamuharada:20050619] [id:osamuharada:20100321] 【 太陽がいっぱい 】→ [id:osamuharada:20120915]