アトリエ日記

osamuharada2014-04-12

前述した、クロちゃんの爪研ぎあとが残るイームズ・ラウンジチェア&オットマンは、事務所から引っ越して、現在がらんとした島のアトリエに置いてあります。もっぱら描きかけのアブストラクトなどを眺めたり、読書(おもに美術書)や、音楽を聴いてはノンビリくつろいでいます。この椅子は、そもそもイームズさんが《 現代生活のストレスを忘れさせてくれる 》ことを目指してつくられた椅子なのだそうです。それで、ノラ猫でさえもリラックスして爪研ぎなんかしていたわけね。
アトリエに置いてみると、この椅子はストレス解消というよりは、トシのせいか、ユッタリと芸術について思いめぐらすほうが今のぼくには向いている。都会の喧噪を離れて、鶯の声に聴き入りながら、心静かにすごすことができる椅子。愛用すること20年。かつては働き盛り四十代の仕事場用に購入しました。ハーマンミラー社のイームズ・ラウンジチェア&オットマンについては→https://www.hermanmiller.co.jp/Product/Eames-Lounge-Chair-And-Ottoman
先日、世田谷美術館で観てきた『岸田吟香・劉生・麗子 知られざる精神の系譜』展があまりに素晴らしかったので、その立派な書籍にもなっている展覧会カタログを、このイームズチェアに深々と座って、読み耽ってしまいました。明治維新とは学校の教科書どおりなんてことはありえない、との思いが深まった。そしてこの岸田吟香という偉大な自由人の親にしてこの子あり。劉生という天才は生まれるべくして生まれたのだ、ということが確かめられて嬉しくなってきた。
台北故宮博物院に続いての、この岸田劉生の展覧会。ぼくには中国文人画と日本の文人画が、ピタリと重なって見えてきた。ますますこの東洋の「文人画」という藝術観にひかれてゆきます。