故宮博物院

osamuharada2014-03-01

台湾に来てみると、いつか見てみたいという願望がかなったものか、明(みん)の時代、文人画中興の祖というべき【沈周】の特別展が開催中でした。ぼくには近頃 LUCKY! な出来事なのでした。ゆっくりと【沈周】の文人画に没頭していると、遥か五百年前の中国奥地を旅する想いがしてくる。なかんずく「蘇州山水」「江山清遠図」の画巻がよかった。あまりに素晴らしいので、間をおいてマル二日間、じっくりと鑑賞してきましたよ。〈芸術〉は現物を見なければ、決してその神髄にふれることができないというのがぼくの持論です。絵画は百聞より一見にしかずというわけね。
故宮博物院】は、おもに中国からの団体観光客でいっぱいになり(年間400万人)、3階にある有名な玉石の彫刻作品「白菜」と「豚の角煮」を目指して列をなしている。昨今どこの国の美術館でも見られるおなじみの光景だな。 さいわい誰も詩画には感心がないらしく、2階の【沈周】特別展はガラガラなのでたすかった。美術鑑賞は見世物じゃないんだから、こうでなくっちゃね。 4階の眺めがよい喫茶室「三希堂」も、団体客はこないのですいている。ここは静かで料理も美味いし、すっかりくつろげる穴場で気にいった。ちなみに今年は「白菜」(門外不出だった)が、東京国立博物館で展示されるよし。
故宮博物院】の所蔵品は約七十万点というから凄い。満州事変後、大日本帝国軍の中国侵略による戦火を逃れて、北京の紫禁城から、上海、南京、武漢重慶を転々とし、危機一髪というところで蒋介石の国民党によって台湾に運ばれた。もし毛沢東共産党が持ち逃げしていたら、後の文化大革命ですべて壊滅させられていただろうな。 それぞれの時代の圧政から隠遁し、桃源郷に想いをはせる「文人画」にこそふさわしき博物館ではないですか。奇跡的に残った東洋美術史の頂点、中国絵画の粋がすべて揃っている【故宮博物院】。もっと贅沢に、たっぷりと見させて欲しいよな。「白菜&角煮」のほうはともかくね。
写真はお隣りの「至善園」から望む「故宮博物院」の屋根。山紫水明といいたいところだが、ここも今日はPM2.5雲に霞んでいる。