映画女優ノート

osamuharada2014-02-22

沖縄の映画好きがゆく「桜坂劇場」にて : またぼくの〈好きな女優で観る〉というわけで、エイミー・アダムスの『 アメリカン・ハッスル 』を観た。田舎娘が都会に出て詐欺師の男に恋をする。1970年代ニューヨークの、ちょっとダサいけれど可愛らしい感じがよく出ている。大胆な衣装は、当時のグッチ。使われる曲目も、ダサすぎる70年代のポップスばかりでピッタリだ。 今年のアカデミー賞主演女優賞候補。ノミネートはこれで五度目だから、今度こそいただきたい。
この映画の主演男優賞候補のクリスチャン・ベイルがまた素晴らしい。同じデヴィッド・O・ラッセル監督の前々作『ザ・ファイター』のボクサー役では、13kgも減量して挑んだそうだが、本作では太って腹は出っ張らせたうえに、ほんとに髪を抜いてハゲとなり、さらに部分かつらをつけての名演技。二枚目俳優が大変身。これまたダサいけれど、どこか憎めない詐欺師の役。当時流行した別珍のスリーピースを着ての、70年代らしい出でたちが笑えた。ちなみに主演の二人は1974年生まれの同い年ですね。ちかごろ珍しく本格的な演技力による喜劇の面白さに満ちている。
脇役陣にも芸達者が勢揃いしていて、特筆すべきは1990年生まれの若干ジェニファー・ローレンスがことのほかいいな。去年、主演女優賞を取ったばかりだけれど、今回は助演女優賞でノミネート。エイミー・アダムスと化粧室で対面するシークエンスでは、丁々発止の演技合戦が光っている。この時にジェファーソン・エアプレーンのヒット曲「WHITE RABBIT」が使われていたのが懐かしかったな。ジェニファーが家の中を掃除しながらアテぶりで踊る場面で使われた曲は、ポール・マッカートニーの「LIVE AND LET DIE」、007の「死ぬのは奴らだ」ですね。爆笑しました。
昨今のお子様向け日本映画と比べると、大人向けエンターテインメントのハリウッド映画はまだまだ健在だった。有名俳優のカメオ出演まで、ぴりっと胡椒のように効いている。ラブコメディだと思って見ていたが、これは実際70年代後半にあった、政治家の収賄事件がテーマというから、元のほうがすでに笑える話なのでした。今年のアカデミー賞では、やはり好きな女優のケイト・ブランシェットも主演女優賞でノミネートだから、ますます目が離せない。
オマケの話:イラストレーターとして、オヤッと思ったのは、エイミー・アダムスが住むアッパーイーストの部屋の壁に、ミルトン・グレーザーの有名な「BIG NUDE」のポスターがかかっていたことでした。日本の浮世絵をもとにしたグレーザーの作品。ぼくも仕事場に飾っていたことがあります。70年代にデザインやイラストで一世を風靡したPUSH PIN STUDIOを知っているかたなら、思わず唸ったところですね。時代考証もちゃんとしている映画は、随所にお楽しみが隠されている。