シネのワインラベル

osamuharada2013-10-27

いきつけのBIO専門のワイン屋さんで、[ siné ]の漫画がラベルに使われている赤ワインを見つけた。値段は庶民的。Raisins Gaulois(古代ガリア人の葡萄)とあるから野趣に富んでいるはず。さっそく飲んでみると爽やかで日向っぽい太陽の味がする。葡萄の絞りたてが自慢の有機ワインにピッタリの漫画だと感心してしまった。シネは、50年代後半から60年代にフランスで人気があったカートゥニスト。古いファンとしては、まだ生きていたんだなァと嬉しくも懐かしい(1928年パリ生まれ)。ブラックユーモアの達人で、政治や社会風刺漫画を得意としている。
シネは、アメリカのソウル・スタインバーグの影響で漫画家になったそうだが、いかにもフランスっぽい都会的なシニカルさが売りなのでした。前に書いた漫画家ジャン・エッフェルにも共通して、フランスは「自由」を標榜するお国柄、反骨精神のカートゥニストが多かったようです。みなレジスタンス世代だったからか、気骨がある。
日本の漫画家・久里洋二さんは、多分このシネに影響されていたと思うが、オヤジ臭さとエロティックな雰囲気は似ていても、シネほど反体制的になることはなかったようだ。日本にも明治から大正までは野暮ったい社会風刺漫画があるにはあったが、昭和の大政翼賛会時代にすっかり消えていった。現代はマンガ時代であるにもかかわらず、一コマ漫画は流行らないし、ましてやセンスある社会風刺漫画など、どこにも見あたらない。ジャーナリズムは、ほとんど広告業と呼んだっていいくらいの体制ベッタリになってしまった。これじゃ辛辣な社会風刺やブラックユーモアが許される余地はどこにもないよね。「表現の自由」は排除されつつあり、いままた大政翼賛会がゾンビのように甦ってきている。シネが生きているフランスが羨ましい。
ジャン・エッフェル→[id:osamuharada:20111117]