東京外食事情

osamuharada2013-10-20

雨の羽田を発って西へ飛ぶ。また台風が近づいているが、雲海の上にでると真っ青な空。めまぐるしかった東京での二週間を振り返っていたら、またケチをつけたくなってきたので、雲の上でこれ書いています。ただのヤツアタリ。
先日、東京のグルメ好きな後輩と久しぶりに会うので、たまにはどこか新しい店でも行きたいなと頼んでおいたら、ちかごろ雑誌で大評判だというイタリアレストランを探してくれた。食材はイタリア直輸入だという。
銀座で会ってから、その話題の店ある目黒までタクシーに乗る。辺鄙なところにこそ意外と隠れた名店があったりするもんですよ、と嬉しそうな後輩。地図で見たあたりで降りたが、店らしきものはビルの角のスナックしかない。すぐに小さな看板でそこだと判明。唖然とするヤツガレに、後輩は申しわけなさそうにヤメときましょうかと及び腰だ。いや存外こんな店で、旨いものをちゃんと食わせるとこだってあるぜ、と勇気を出して入店した。ここまで来て、今さら他に行くところも無いしな。
幅30cmほどのカウンター席のみ。予約をとるのがいま東京で一番難しい店だというが、これだけ狭けりゃすぐ埋まる。ガラス窓に直面した席に座ると、目の前に何故か豚のヌイグルミや豚の置物が山ほど並んでいた。後輩の顔に再び不安の色がひろがる。
メニューはなく、180°振り向いた背後の黒板壁にチョークで書いてある。今日のオススメのところに「凄い!カルパッチョ」と形容詞がものすごい。しかし魚は東日本産らしいので遠慮しておこう。グラスワインのグラスは、ホテルの洗面所に置いてあるようなタンブラーで、底の方に少ないワインが沈んでいた。イタリア産ルッコラのサラダは普通に旨いが、チーズはほんのオマケ程度に振りかかる、隠し味なのであろうか。ローストした大きな鶏肉は熱いバターソースがけで、シンプルさを狙っているようだが、これだけ平凡な味付けじゃすぐに飽きてくる。
あれからいろいろ食べてはみたが、どれも単純さだけを売り物にしているところが子供っぽい。ということでは、この店で最も忘れがたきはスパゲティだろう。小学校のまずい給食を思い出した。今どきこんな安物パスタを使うイタリアレストランも珍しい。B級グルメかな。ところが隣の女性客お三人様は、青いどんぶりに盛られたスパゲティ・ボンゴレが運ばれたときに嬌声をあげていた。しかもみな拍手喝采でお迎えしたのだった。
後輩が我を忘れて、ええっ、ソレでですかっ!と余計なことを叫んだため、すぐ横の厨房前カウンターに陣取っていた男客が振り向いて、ちょいと睨みをきかした。こちらは、オシャレ雑誌編集者風の四人連れ。さっきから業界話で盛り上がっていた。ヤツガレも知ってるライターの名前が出たところで、マガジン家の関係者だとみたね。どおりで雑誌じゃ大評判になるわけだ。仲間誉めというやつ。雑誌なんかを信用した私が馬鹿でしたと恐縮しまくる後輩。いやー近頃この程度の「人災」ですめば、ラッキーなほうだと思わなくちゃ生き残ってはゆけないよ、とまた励ました。
後日、すっかり後悔した後輩から、こんな写真入りブログありましたと報告。→http://otto-e-mezzo.seesaa.net/article/268486767.html  近頃は雑誌よりネット情報のほうが、いいね。