夏休み2013

osamuharada2013-08-07

【 残暑お見舞い申し上げます。】 こちら島のアトリエは、気温が東京より平均2、3度は低いけれど、それでも真昼から三時頃までは、かなりの暑さで外には出たくない。今年は熱中症が急増したそうで、その半分が65歳以上の高齢者というからは、要心にこしたことはないですね。何かするにも、朝晩はとても涼しく過ごしやすいので、島の気温にそって静かに生息しているといった夏休みです。右は朝の中庭。
キャンバスに描く絵も、つい涼しげなBLUE系の絵具ばかりを選んでしまう。昼飯には冷や麦などがいいですね。器も吹きガラス製の出番が多くなる。四国剣山「半田手のべそうめん」も旨い。富岡鉄斎の画集で「観瀑図」を眺めながら朝の煎茶(屋久島産)を喫する。ボサノバなどを聴きながら昼寝する。同年代の老人がする釣りやゴルフに居酒屋通いはもとより興味なし。ただ相も変わらず趣味のアブストラクトを描き、読書(ジャンルはあれこれ)するのみ。稼業や些末事は忘れて、このシンプル夏休みが一番性に合っているようです。
【夏休みの読書】 閑人としては、昼の猛暑をやり過ごし、あとは安穏としていたきところなれど、気がかりもある。東電人災による放射能汚染がとどまることを知らぬ日本の現状と未来。楽観も悲観もしたくはない。常に、リアルにこの問題を考慮してゆくのみ。この四月に岩波書店から刊行『チェルノブイリ被害の全貌』は、貴重にして膨大なデータが危機を伝えている。いまの日本人にとって最も重要な、警鐘の一書なるべし、と思えた。
今年の新刊で、他にも印象に残るのは、毎年楽しみにしている小林信彦さんのエッセー集『映画の話が多くなって』(文芸春秋)。2012年分の総まとめ。あとがきには〈 人災のひとことでは終らない政治の愚かさ、内紛についての怒りは、ラジオだけを聞いていても、ぼくのなかに沸き上がってきます。〉と書かれていた。体調も崩されていたそうなので心配です。これからも週刊文春(他はつまらないから)小林さんのところだけ時々立ち読みします。
ついにベストセラー作家になった近藤誠著『「余命3カ月」のウソ 』(ベスト新書)。還暦したばかりで、食道がんで死んだ無二の親友のことを思い出し、くやしさがこみあげてきた。根拠のない脅し文句で、苦しい手術を受け入れさせる日本の医者が恐ろしい。がんの延命率は、手術した人も、何もせずに放置した人も同じなのだ。ほとんどのがん手術や抗がん剤治療は苦痛が伴うだけで延命できるわけではない。亡き友が繰り返されるがん手術で、肉体的、精神的にも苦しんだ最晩年を帰せ! と言いたくもなるよ。
エンターテイメント本では、スティーヴン・キング著『ビッグ・ドライバー』(文春文庫)が、一気に読まずにはいられなくなる面白さ。中編推理小説二題。いずれも女性が主人公の、ヒッチコック風サスペンス。キングは大作よりも中編くらいのほうが好きだな。語りの上手さに磨きがかかってきた。二作とも悪魔やホラー趣味ではなく、普通の人が事件に巻き込まれるスタイル。最後には痛快なカタルシスが待っていてくれる。猛暑なんか、この一書で吹き飛ぶこと請けあいます。
後は、ほとんど古書ばかり読んでいます。特に今夏のヒマつぶし、ぼくの歴史推理テーマは、【靖国神社】参道のド真ん中にある銅像の【大村益次郎】暗殺事件についてです。上野に立てこもった江戸幕府彰義隊を、新兵器アームストロング砲で木っ端みじんに殺りくした大村益次郎明治新政府になって、すぐ国民皆兵の【徴兵制】を進言した長州の軍人ですね。薩摩の大久保利通薩長土佐の藩兵だけを残せ派)とは対立して一時は辞職、その四ヶ月後に京都三条木屋町の旅館で暗殺されている。享年45歳。誰が何のためにプロのアサシン集団を使い、テロに見せかけてまでして抹殺したのか? この謎解きにハマっているところ。
実は、あれこれ古書をあさっているうちに、大村暗殺の真犯人は、慮外ながら【坂本龍馬】暗殺犯と同一人物でビックリ、というような推理が成立してしまいましたよ。動機、プロファイリング、抹殺のテクニック、アリバイ崩し、世界情勢で見る、ミッション・イン・ポッシブル、文献をあさり見えてくるのは、巨大な闇の支配者の姿。ついでながら、明治10年に麹町紀尾井坂で暗殺された大久保利通(アソーとタケミの曾々爺さん)。この時のテロ士族を裏で操っていたのも、まったく同じアサシン集団だったと推理しています。これはジョン・ル・カレにでも長編スパイ物で書いてもらいたいな。 大村益次郎の死後、正式に日本初の【徴兵制】を施行したのは、同じ長州の山県有朋(後に汚職で在野に下る)です。今夏、長州アベ&薩摩アソー(ナチス)は「靖国参拝」をやり遂げるだろうか? はたまた怪獣イシバも【徴兵制】の元祖・大村益次郎像の前に額突くのであろうか? 平和憲法九条改悪のためなら、とりあえず嫌がらせで中国と敵対しておくのが、一番手っ取り早いものね。日本はまた血塗られた明治維新の「振り出し」に戻っちゃうのかね。するとお次は、徴兵して日清戦争を始める。HISTORY REPEATS ITSELF か。