安定は、希望です。

osamuharada2013-07-31

ニューヨークの喧噪を離れ、帰りの飛行機のなかで、日本の現状について取りとめもなく想い巡らしていた。ところがどう考えても前向きな気持ちにだけはなれなかった。結局は、頼りなさと不安でいっぱいになる。成田に到着する頃には、東京へ帰りたくなくなっていた。
薩長同盟の組織票で、政権を取り戻したと喜んでいる自みん党政府は、新興宗教党の票を加えてもらえなければ、過半数に達しなかったことなぞすっかり忘れているようだ。しかも国民(主権者)の半数は無関心という最低の選挙だった。そのほうが自公政権には都合よかっただろうけれどね。
気になったのは、東京の選挙区から出馬した自みん党の武見ケーゾーが、「日本医師会天皇」と呼ばれた武見太郎の息子で、ひいひい爺さんが薩摩の隠密だった大久保利通だから、アソー(ナチ)太郎の再従兄弟(はとこ)でもあること。またも閨閥ファミリーだ。 しかし、お医者さんと薩長政治屋の組織票があるにもかかわらず、結末はかろうじてのスレスレ当選。政党政治も医師会にも縁なきヤマモト太郎君に惨敗している。日本の医学会が放射能被害など日本では認めないのだと言い張っても、世界情勢を知る一般人の〈原発事故による内部被曝〉への不安は払拭できない、ということの現れのような気がするな。子供の健康と未来を最優先とする大人たちが、もはや黙ってはいられなくなったのが現状というものでしょう。
日本医師会利益集団)への不信感は、近藤誠先生の近著『医者に殺されない47の心得』アスコム刊、という本が最近のベストセラーになっていることでもわかる。現在88万部突破で第三位だ(村上春樹の新作本100万部が第一位だけれど実売60万らしい)。慶応病院で、がんの放射線治療専門医の近藤先生は、CTスキャン検査による外部被曝量が日本は世界一であって、その被ばくによる癌患者が増えている、と医療被曝の実体についても言及している(前に読んだけど『放射線被ばくCT検査でがんになる』亜紀書房刊という著書もあり)。おかげで日本医師会からは、つまはじきされているらしいが、多くの医者や御用医学者は人命よりカネ儲けのために働くだけだ、とまで近藤先生は内情をバラしていますよ。もとより『患者よ、がんと闘うな』文芸春秋社刊の、かのロングセラー本の著者でもありましたね。菊池寛賞も受賞。ヤツガレはすべてを愛読しております。
また最近目にしたのでは、街に張ってあった新興宗教の政党ポスターが気にかかる。ピンクの地色に白抜き文字のデザインは、あのユニ黒のデザイナー(学会員)によるものか(どうでもいいが)。それより、いかにも宣伝コピーライターが書いたとおぼしき惹句には、【 安定は、希望です。】コーメー党、とあった。どーゆうこと? この意味がよく判らないのだッ! どうしても、「安定」とは、「希望」にすぎないのです。と読めちゃう。じゃ望んでも安定はしないワケかよ、とツッコミたくなる。しかも何をどう「安定」させたいのか、主語が判然としない。思わず笑ってしまうが、確かに日本の愚かしき現状を、見事に言い表しているかなと感心(三秒くらい)もした。 こんな、シュールな宗教政党の票が加算されないと、政局を握って安定しないのが自みん党政権なのだから情けない。与党としての「安定」も、アベのみクスの身内だけ経済「安定」も、人災・大事故後の原子力ムラの「安定」も、すべては、はかなき【 安定は、希望です。】であって欲しい。希望するだけならいいけれど、無理して安定させなくたってコっちは構わないからね。