チャン・ツィイーの新作

osamuharada2013-06-06

東京へ戻ったついで、また映画を〈女優で観る〉ことに。 ウォン・カーウァイ監督『グランド・マスター』。めざすは女優チャン・ツィイー。アクション映画でこそ最高に美しく輝く女優さんだな、と改めてつくづく感心したようなワケ。やっぱり女優の良し悪しは、その映画の役柄で決まっちゃうもんだよね。この際、チャン・ツィイーは、女流カンフー・スターであるとはっきり独断してしまおう。
かつてアン・リー監督『グリーン・デスティニー』(2000年)で、チョウ・ユンファと見せてくれたチャンバラ剣劇以来、やっとアクション映画に帰って来てくれたなという感じがする。あれ以後ロクな映画に出会っていなかったものね。チャン・イーモウ監督の『HERO』『LOVERS』では、アクションがイマイチだった。またハリウッド映画においては、白人優位の東洋人蔑視の感ありで可哀想なチャン・ツィイーだったが、それよりもひどかったのは、鈴木清順監督の『オペレッタ狸御殿』で、日本映画恥ずべき。 それでも一応は、チャン・ツィイー出演となればほとんど観ていたが、ミスキャストばかりでいい加減うんざりしてきたところに、こんどの本格的カンフー映画『グランド・マスター』ですよ。待てば海路の日和かな…。
闘う姿のチャン・ツィイーの美しさは、年齢とともに格調をたたえ、まばゆいばかり。まるで舞いを観ているかのよう。優雅でしかも勇ましい。しなやかな所作と、意志の強い顔の表情にシビレましたよ。トニー・レオンとからむ立回りシークエンスや、鉄道駅での長い決闘の場面、まさに中国舞踏だ。どこか古典の「京劇」に通ずる動きあり。 こと映像に関して、いつもは頽廃美がお得意なウォン・カーウァイ監督も、この映画では素直に痛快なアクションを描いている。伝統ある中国拳法へのオマージュがうかがわれて爽やかだ。ぼくの〈女優で観る〉備忘録に、早速コレは追加しておかなくっちゃ。