新・歌舞伎座

osamuharada2013-02-21

四月に開場する新しい歌舞伎座は、もとの姿そっくりに再建できたようだが、ただ真っ白にペンキ塗り替えただけですという感じもする。すぐ後方の味気ない超高層ビルが、劇場部分の屋根を突き破ってニューっと上に聳えているところが確かに新しい。歌舞伎座が巨大な風呂屋ファサードに見えてくるけれどね。内装も忠実に再現したそうだから、地下鉄東銀座駅を出て、すぐ中に入っちゃえば気にならないか。絵看板も同じ場所に復活したのはホッとしました。鳥居さんにまだまだ頑張っていただきたいですね。
六本木サントリー美術館の、歌舞伎座新開場記念展『歌舞伎―江戸の芝居小屋』へ行ってみた。東京に戻ったら、久しぶりに文化文政期の豊国や国貞の役者絵が見たくなったので…。 数は少なかったが、やっぱり江戸時代を通じてどの美術も素晴らしいなとあらためて思った。「阿国歌舞伎」など初期肉筆浮世絵は、江戸時代はじめの上方文化だけれど、一種の頽廃美には圧倒された。岸田劉生の慧眼で再発見された日本的美意識のひとつだろう。前の歌舞伎座の二階に掛かっていた絵、鏑木清方の「さじき」も出展されていた。むかし拙著「ぼくの美術帖」に書いた母娘が桟敷からの観劇図です。これも四月からは元通りの場所に返してくれたら嬉しいな。
団十郎勘三郎も急逝してしまった歌舞伎界。松竹が新しい歌舞伎座で起死回生を期するなら、急いで海老蔵菊之助に【団・菊】を襲名させるしか他にないだろうな。今どきのお客様が「ブランド信仰」を失わないうちに手を打っておかないと、歌舞伎そのものが終わってしまいそうな気がするね。世襲制ブランド・ファンにとっては、芸よりも芸能人ネタを絶やさないことが大切だろう。なにしろご観劇料金2万円の高級ブランドだもんね。
壊す前の歌舞伎座[id:osamuharada:20090304] 歌舞伎座の絵看板[id:osamuharada:20100427]