3Dと超巨大画面

osamuharada2013-02-19

ちかごろ超巨大画面のアイマックスで観る3D立体映画がまた面白くなってきた。『プロメテウス』に続いて、こんどは『ライフ・オブ・パイ』。太平洋を漂流する少年パイと虎の話というので、最初はまったく興味なかったけれど、監督があの『グリーン・デスティニー』のアン・リーと聞き、しかも今度はIMAX+3D上映しているとわかって、川向こうの木場にあるアイマックス・シアターへ。
アン・リー監督作品では、とりわけ中華チャンバラ映画の『グリーン・デスティニー』(2000年)が大好きだった。チョー・ユンファ兄貴と、〈女優で観る〉ならチャン・ツィイーの、素晴らしいワイヤーアクション場面は、歌舞伎のケレン(宙乗りなど)をはるかに超えて美しかった。その類いまれな映像感覚を持つアン・リー監督が、IMAX+3Dで新しい映画をつくったら、一体どんなことになっちゃうのだろうか? と大いに期待しての『ライフ・オブ・パイ』、ヴィジュアル目当ての映画鑑賞。
はたして期待をまったく裏切らず、のっけのタイトル、動物園のシーンからして美しい。配するクレジットのタイポグラフィーがまたセンスよくウットリさせられる。文芸作品の映画化らしく、本の装幀デザインを思わせる平面デザインながら、それが巨大画面の立体映像になってくると、どんどん映画の中へ入り込んじゃうのね。二次元から三次元へと移行してゆくときの快感が凄い。プロローグのプールの水中場面あたりからは、もうすっかり映像世界に入って抜け出せなくなっている。さらに愉しむためのコツは、3D眼鏡だけに頼らずに、自分から積極的に立体視へ向かって意識を集中することが肝心でしょう。さすれば臨場感あふれる映像が現出し、違和感なく自然な感じで、いよいよもって3D映画にハマってゆく。
本筋の太平洋上のシークエンスが始まると、眼前には大自然のダイナミズム、広大無辺の海原、その昼と夜の世界がめくるめく展開する。少年と虎の葛藤もまあいいけれど、立体感のある映像美が、物語をはるかに凌駕して面白いなと思ったね。これが文学と映画の違いでしょ。少年が神を垣間見るという、幻覚のシークエンスの美しさに至っては、(合法的に)トリップができちゃいましたよ。原作を本で読んだってコレばっかりはできないよな。虎が誰のメタファーかなんてつまらない話だしね。ストーリーよりも素晴らしい映像は、三次元から、さらに四次元まで一気にいってしまい、神秘の世界を如実にストレートに見せてくれた。まさに神が顕現する瞬間のようだった。IMAX+3Dとは、健康的で、安価で、しかも安全なドラッグのようにもなりうるな。できたら『グリーン・デスティニー』をもう一度、この超巨大画面&立体映像化してほしいもんですね。
前に書いた IMAX+3D映画。『プロメテウス』[id:osamuharada:20120826]、『アバター』『トロン:レガシー』[id:osamuharada:20110130]
2月25日追記:【アカデミー賞】発表。『ライフ・オブ・パイ』が最多四部門受賞。アン・リーが「監督賞」その他「視覚効果賞」「撮影賞」「作曲賞」。アン・リー監督はこれからも3Dで撮りたいとコメントしていた。楽しみだなッ!