冬の沖縄日記

osamuharada2012-12-04

夏のヒートアイランド東京を逃げ出したように、こんどは冬の寒くて震える東京を避けて沖縄へやってきた。暑さ寒さにひ弱な高齢者という言いわけもできるが、東京にいては醜悪な選挙合戦がうるさくて不快だということもある。フザけた東京都知事選なども、こちらで不在投票すれば、静かな散歩の途中でいっぺんにかたづく。
今日の沖縄は晴れ。気温は25度近くあって快適。本島も中部北部は、朝からオスプレイや米軍機の爆音に悩まされているそうだが、米軍基地のない南部までくると相変らず穏やかで、海もなんだかノンビリした感じがする。急ぎ仕事の手をやすめて、隣の公園に面した仕事部屋の窓を開け放つと、すぐ下に古い湧き水のファウンテン(写真)があり、水音高く、清々しい気分になる。この山の一帯はあちこちで湧き水が出ている。グスクも周辺にいくつかあり、ここらへんも倭人伝の邪馬台国群のひとつがあったはずだと空想は広がってゆく。
『沖縄の文化と歴史の考察』という本を捲っていたら【ニライ・カナイ】という古い言葉に瞠目させられた。かなり古くから沖縄に伝わる言葉で、「海の神」という意味合いがあるらしい。同時に『黒潮圏の考古学』という本を読んでいたので、ピントがぴったり合ってきたようだ。二千年前の弥生時代は、沖縄=邪馬台国説で考えると、弥生人ならぬ海洋系縄文人邪馬台国群の人々だったことになる。とヤツガレは思う。
さらに1万年もさかのぼった縄文時代には、世界最強最大の【黒潮海流】に沿った豊かな海洋系民族文化の存在が、最近になって解明されてきた。「海の道」である。黒潮は北上しやがて伊豆諸島に達する。沖縄本島南部の目の前にあるこの黒潮海流が、我がアトリエのある島に通じていて、沖縄とも共通の文化圏を成していたとは、考えるだけでゾクゾクしてくるな。暖流の黒潮は伊豆諸島を過ぎて、茨城のあたりで親潮という寒流にぶつかり、方向を東に変えて太平洋に流れてゆく。
海の縄文人は遥かポリネシアに到達したとも考察されている。【ニライ・カナイ】という古語は、『琉球国由来記』によれば伊平屋島の項に出てくる。その用法のひとつに《 ワカニライニ ・ワカカナイニ 》という語句があった。これってハワイ・ロコの人たちの言語にもよく似ているじゃないですか。ますます面白くなってきた。昨日近所を散歩していたら、コンクリート製の「ニライ・カナイ橋」というのがあった。訳もわからないまま、神聖な言葉が一人歩きしているのかもしれない。ゆるキャラだけは作ってほしくないけどね。