捨てられないTシャツ

osamuharada2012-11-22

寒くなってきたので、避寒を兼ねて沖縄にやってきた。那覇空港へ着くと、薄手のダウンジャケットとカーディガンを脱いで、長袖シャツだけになったが、それでもまだ暖かい。まわりを見回すと地元の人は半袖シャツを着ている。湿度も充分ある。ヤツガレは幼少より鼻が悪く、鼻炎(花粉症にはなっていないけど)や鼻風邪にかかりやすい。冷気と乾燥が大敵だ。なので冬にこの暖かさは何ともありがたい。友人のいる本島南部に落ち着いて、すぐTシャツに着替えた。
Tシャツといえば、こないだアトリエの押し入れの奥からでてきたこの写真の古いTシャツ。これは1979年にイラストと旅行の仲間四人でパレットクラブをつくり、グループ展をしたり雑誌に書いたりしては、遊んでいた頃につくられたTシャツであります。これも遊びの延長で数十枚つくったものです。日本製で、レモン色と白地と霜降りのグレーの3色製造した。仲間内や友達にあげるだけの少数なので、ロット数をカバーするため、ぼくのオサムグッズ商品のTシャツを流用したものです。つまりキャラクターのかわりに自分でデザインしたロゴをプリントしただけのもの。まだ三十年前のあの頃は、今のように安く簡単に、生地選びからデザインのオリジナルものを少数作ることが難しかった時代なのですね。首のところに付いているメーカー織りネーム(タグ)は、Osamu Goodsのまま。簡単なプリントではなく、ちゃんと群青色と黒の2色で刺繍した文字(これも安くはないのですよ)のロゴタイプにしてあります。
ペーター佐藤は、当時このTシャツが気に入ってニューヨークにいた頃もずっと愛用してくれていました。安西水丸大兄は、特に霜降りグレー地がお気に入りで、ヨレヨレになっても下着代わりに何年も着ていたな。着古して、くたっと形が崩れだしたころが一番カッコいいのだ、というファッションセンスなのでしょう。新谷雅弘先輩は、あんまりTシャツが好きではないのか(似合わないしな)、師匠の堀内誠一さんにこのTシャツさしあげたところ、たいそう気に入ってくださったそうです。『堀内誠一・旅と絵本とデザインと』(2009年刊)にも、霜降りグレー・ヴァージョンを着ておられる堀内さんの写真が載っていましたね。とてもよく似合っているな。ぼく自身はTシャツが似合わないと思っているクチなので、人前ではあまり着ず、島のアトリエで10枚ほど愛用して着古した。この一枚を残して、ほとんどは絵具だらけにしたあげく、最後は絵筆を拭くためのボロっきれとして使い果たしました。
たかがTシャツながら、ボンヤリ眺めていると、いろいろなことが思い出されるもんだなと気がついたので、これもまた断捨離できなくなってきた。それで大切に保存しておくことにしましたよ。