ウクライナとベラルーシ

osamuharada2012-11-08

今年の七月、ベラルーシ共和国で、新たな原発2基の建設が決定したというニュースがあった。ロシアが融資をして、ロシアが建設をするよし。ベラルーシといえば、短編ドキュメンタリー部門でアカデミー賞を獲得した、あの映画『チェルノブイリ・ハート』(2004年)の、悲惨な国のひとつというのがぼくのイメージだったので、このBAD NEWSにはガッカリした。旧ソビエト連邦が崩壊し、独立したはずのベラルーシは、結局は今でもロシアの傀儡としての独裁政権下にあるということなのでしょう。この国家のもとでは放射線による健康被害など微塵も無かったことになっているらしい。
テニス界の美神シャラポアは、両親がベラルーシ人で、チェルノブイリから北へ約130kmのゴメリに住んでいたが、1986年原発事故の直後に、遥かシベリアへ避難したという。その厳寒の地シベリアでマリア・シャラポワは一年後に生まれている。『チェルノブイリ・ハート』にも出てくるゴメリは、風向きでホットスポットになったベラルーシの都市のひとつだ。
先日、地デジが映らない環境にいたので見逃していたNHKの番組『ウクライナは訴える』を、ネットでやっと見ることができた。よくあのNHKがここまで放映してくれたなとビックリだが、このドキュメンタリー番組には驚愕させられた。旧ソ連時代のチェルノブイリが、現在位置するのはこのウクライナ共和国内です。
ウクライナは訴える』は、去年の4月に【ウクライナ政府報告書】が公表されたことをテーマにしている。チェルノブイリ原発事故から25年がたった現在も、放射線による健康被害は増加していると報告されている。公認の白血病白内障、小児甲状腺癌のみならず、心筋梗塞狭心症、脳血管障害、気管支炎など、国連が認めている放射線による健康被害よりも圧倒的に病気の範囲が広い。しかも死因の9割が心臓や血管の病気だという。これは236万人のデータによるもの。
この【ウクライナ政府報告書】で、さらにショッキングなのは、チェルノブイリ事故後に低線量の汚染地区で生まれ育った23万人の子供たちの調査報告。その約8割が慢性疾患を持つという悲惨な状況でした。小学校の保健室では、心臓の痛みを訴える子供が多く、ときには一日に3回も救急車を呼ぶことがあるという。給食は厳重に検査をしてから基準値以下のものを与えているにもかかわらず、いまだ健康状態の悪化をくいとめることができない。なんとこれが事故から26年もたった、いま現在のウクライナで起っていることなのですよ。放射線による健康被害が、今の子供たちの未来を奪っている。
しかしながらウクライナは、一時期は原発を全面停止にしたものの経済危機後に再稼働をさせている。国民の生命よりも経済優先という、現世利益的な政策をとっている国。大きな矛盾を抱えたまま、ついに不毛の国家となってしまったようだ。
十月のニュースには、ベラルーシの北西に隣接するリトアニア共和国の報道があった。日本の日立製作所がすでに受注していた新規の原発建設(総工費5100億円)に対して、リトアニアはストップをかけたというGOOD NEWS !なのでした。 国民投票による反対意見が大多数をしめたので、原発建設計画が頓挫してしまったのです。リトアニアの民衆は、去年の東電の人災をしっかりと見すえ、日本という国に不信感を持ったものと思われる。危険な原発などリトアニアには持ち込まないでくれというわけ。ベラルーシなどよりずっとリベラルな国家だ。ウクライナよりもはるかに前向きな国ではないだろうか。
さて未曾有の原発事故という人災から一年半たったばかりの日本では、リトアニア共和国の如く国民が毅然として原発を拒否することができるだろうか? それとも、子供たちに犠牲を強いてきたベラルーシウクライナの二の舞を踏むにすぎないのだろうか?
ETV特集ウクライナは訴える』→http://www.dailymotion.com/video/xttxzo_etvyyyyyyy-yyyyyyyyyyyy-yyyyyyyyy_news