アトリエ日記

osamuharada2012-09-26

今年の夏は、築三十年もたったアトリエのメンテナンス工事をした。春に雨漏りがしたので、台風にでもなったら大変だとあわてて屋根の工事を頼んだ。防水屋さん,大工さん,ペンキ屋さんと東京から来てもらって、まる一週間かかった。人間も建物も、やがては老いぼれちゃうのはいたしかたない。それでも建物の周囲の樹木のほうは、この三十年間で成長し続けている。植物の強靭な生命力には、人も建物もかなわない。
グーグルアースで、アトリエを上から眺めてみると、近隣に家がないので、まるで樹海の中にでも存在するように、小さな白い箱庭がポツンと見えるだけ。私道はすでに木の枝葉でトンネル状態になっているため上からは見えない。道も通じないジャングルの中に、忽然と白い小箱が置かれた感じ。とても家には思えないし、ここに人が住んでいるとは信じてもらえなさそうです。
工事に来ていた職人さんにも聞かれた、「こんなところに居て、寂しくはないんですかねェ?」と。 これは島の人からさえもよく聞かれることなので、そんな時の返事は決まっている。「絵を描くのは、一人にならなきゃ描けないもんなのですよ。」である。これでだいたい不本意ながらもアトリエというものを納得していただけるようだ。 しかし普通の人からは、絵描きというものはどこか変人に思えるだろうから、理解はしてくれないだろうな。 もっとも、ぼくの場合は作品を売る職業画家ではないし、絵画ではなくイラストのほうなら食うための稼業でやっているだけだし、どういうたぐいの無名画家なのか説明に窮するのです。ただ変人であることだけは、このトシになればもう自他ともに認めざるを得ないことぐらいはわかっているので、ご心配なく。 ほんとは、明末清初の頃の文人画家に憧れているという、オイボレ画家にすぎません。岸田劉生の〈隠世造宝〉や、富岡鉄斎の〈今人古心〉が、座右の銘です。