散歩と杖

osamuharada2012-08-22

このごろは杖をついて散歩に出かけるのが習慣になってきた。情けないけれど、杖を手にすると安心して歩くことができちゃうのだ。十年ほど前に、膝を痛めてひと月ほど辛いおもいをしたことがあり、そのときにたまたま買った竹の杖がいまになって役立ってきた。杖というものは、手にするだけでもココロ強く、かつ悠然たる気分にもなってくるものですよ。
そうゆうワケで、あれから膝が痛くはなくとも、還暦を過ぎし頃から再びこれを用うるにいたりました。トシ相応になったなァと自覚するのは、島の自然のなかの散歩道を歩るかば足元おぼつかなきことありきゆえです。ぬかるみや凸凹道、坂道などでは足をとられてヒヤッとした。すなわち転ばぬ先の杖とやら、杖こそは必携なりにけり。
どうせ杖を買うなら、と竹製の杖をわざわざ選んでしまった理由は、当時なんとなく鉄斎のような文人への憧れからだったような、くだらない料簡が自分にあったからで、竹そのものは歩行に直接関係ないのです。チャップリン吉田茂に憧れたのではありませんよ(念のため)。つまるところ竹の杖というものは、もとより趣味性強きお洒落アイテムらしい。こんなものでも値段はばかにならなかった。
ほとんど人には誰も会わず歩ける島のマイ・フェイヴァリット散歩道では、何もモンダイないのですが、さて杖を東京都内の人なかで用いるには、ちょいとまだ抵抗感がある。格別足が悪いわけでもないのに、たまさか知人に出会ったりすれば、ひどくビックリされるか同情されて、事情を説明するのもめんどくさい。
最初はそれでも自意識過剰にすぎずとみずからに言い聞かせ、平然たる態度をつらぬき歩いていたのですが、いざ杖ついたまま地下鉄などに乗り込んでみるや、知らぬ他人からヘンに気を使われたりするのが申し訳なくなる。どう見てもヤツガレよりは年上の方から席を譲られたことだって経験した。松葉杖じゃないのだから、ほっておいて欲しいところだけれど、都会ではどうも無理なようなのです。そのうち、こちらが正真正銘ヨボヨボの爺さん(そんなに先ではないが)になるまでは、もうしばらく都会での杖はエンリョしておこうかなと思っている。またどふでもよゐ話でした。