梅雨のアトリエにて

osamuharada2012-06-20

梅雨のアトリエ。ジャズとクラシックを聴き、久しぶりに抽象画を描いたりしています。ことに雨の日には読書三昧です。デンマークのミステリー『特捜部Q』シリーズ(早川書房刊)の2冊を続けて読んだところで、次は 山田順 著『出版大崩壊』(文芸春秋社刊)という過激なタイトルの本。去年3月に出たときにすぐ買ったが、天災と人災ですっかり忘れかけていた。いまあらためて読み直してみると興味深い。この本が、3.11直前に書かれていたことは、いまや別の角度で読むに値する。特に【マスゴミ】とまで呼ばれ、その名にし負う大新聞社のゆくたてについて考えさせられる。
この本で、3.11以前、リーマンショック後の大不況のために、マスコミ業界も閉塞感におおわれていたことがよく解る。2009年の「仕事の意識についての調査レポート」ではこう書かれている。《 ビジネスパーソンの42.1%が「いまの会社を辞めたい」としていた。》これには、さして驚くにはあたらないとあるが、《 ところが、業種別の結果に、私は驚いた。なんと、「マスコミ・広告・出版・印刷系」が50.4%ともっとも高くなっていたからだ。しかも、「社員であることに誇りを感じていない」と答えた割合でも、「マスコミ・広告・出版・印刷系」が38.1%で2位にランクしていた。》とある。この記述の前に、新聞業界がアメリカ同様の縮小過程に入り、2010年、朝日新聞社産経新聞社が、希望退職者を募って、つまりリストラが始まったことなどが書かれてある。リーマンショック以後の《 日本国内の新聞発行部数は、史上始めて100万部を超える減少となり、その後も部数減は止まらない。》
いまになって、今度はヤツガレが最も驚かされたのは、2009年仕事の意識についての調査レポートの続きの部分。 《 逆に「いまの会社を辞めたくない」としている業種1位は「電力・ガス・水道」で35.8%。 「誇りを感じている」と答えた割合でも、「電力・ガス・水道」が43.4%でやはり1位だった。》というくだりでした。3.11以前は、あの【安全神話】が、職の安定にもつながっていたわけだ。マスコミにとっても、最大の広告スポンサー様が電力会社だったものね。
さて、3.11以後の新聞・テレビ報道の大マスコミは、戦前戦中の大日本帝国に舞い戻ったかのように、民自公という一つの政府による大本営発表をそのまま繰り返している。前から仕事に「誇りを感じていない」ビジネスパーソンとしてのマスコミ社員たちは、まだ与えられる高賃金欲しさに無理をし続けるのだろうか? こんどは3.11以後の意識調査レポートをみてみたい。 名にし負はば いざこと問はむ 大マスゴミ なんて言ってみたくもなるけどね。
追記:四大新聞社の従業員数。読売5000人、朝日5000人、毎日2800人、産経2100人。〆て約1万5千人。(女性従業員は約15%) 今年「社員であることに誇りを感じていない」ひとは何%になるのかな?