温泉と銅像

osamuharada2012-05-18

鹿児島からローカル線で指宿まで。名物の砂風呂はパスして、山のなかの温泉へゆきました。露天風呂好きとしては、周辺の植生がどうなっているのかが気になる。眼下に海の見える山あいの景観は、ぼくのアトリエがある島とソックリな樹木が揃っていて、同じ黒潮が運ぶ温暖な気候は、やはり同じ植生を育んでいるんだなァという実感がした。 近頃の地方都市が、どこへゆけども似たようなブキミな感じがするのとは違い、日本固有の大自然は、似ていても居心地が良い感じがする。温泉はいたるところにあるしね。九州の最南端で、爽やかな新緑の露天風呂を朝昼晩と楽しみました。
鹿児島に戻ると、晴天にもかかわらず正面の桜島は霞んでほとんど見えていない。今年に入って桜島はすでに500回(観測史上最速)を超える噴火を繰り返しているそうです。例年夏になれば風向きが変わるので鹿児島市内には大量の火山灰が降る。タクシーの運転手さんは、一日に何度も洗車しなくてはならない、まるで砂漠ですよ、と当たり前のように話していた。天候はともあれ、鹿児島では素晴らしいトンカツ屋があったので大満足。そもそも鹿児島産豚が美味いからで、トンカツの本場東京にも引けをとらない。
【歴史好きのかたに】鹿児島中央駅からまっすぐ加治屋町の交差点を通過したら、大久保利通銅像が目に入った。今でも大人気の西郷隆盛に比べ、西南の役では官軍として西郷&薩摩藩士たちを滅ぼした張本人が大久保だからか、明治の元勲になりながらも、鹿児島県民からは嫌われ続けていたはずだ。ビスマルク髭をたくわえたドイツかぶれの姿も、売国奴的な実像をうかがわせる。ちなみに 麻生太郎(未曾有)元総理のひいひい爺さんがこの大久保利通でしたね。
西郷隆盛もおなじ加治屋町の出身だけれど、(正史には書かれていないようだが)この町は代々「隠密」が住む限定居住地区でした。大河ドラマ篤姫』でも島津斉彬の「お庭番」(隠密・忍者・スパイ)として西郷どんが登場していましたよね。江戸幕府であれば服部半蔵が同じ身分。半蔵門のある麹町(現・英国大使館のあたりか)がその本拠地でした。つまり西郷も大久保も「草」と呼ばれ、フツーの武士とはまったく違う特殊な身分でした。仕事はCIAやジェームズ・ボンド、ミッション・インポッシブル、忍者ハットリくんみたいなもんでしょうか。薩長土肥が天下を取った明治維新の後で、お互い勝手に爵位を与えあって、突然に偉くなっちゃったくちなのですよ。上司の小松帯刀はさしずめ薩摩藩のCIA長官といった役どころでしょうか。
ついでながら東京の上野公園にある有名な西郷さんの銅像って、大久保と同じ明治の元勲にしては正装でもないし、浴衣にワラジばきとはラフすぎちゃって貧乏クサイよね。どうやら後に反政府軍の大将になったことから、反逆者の銅像として立派な格好はさせてもらえなかったらしい。しかも実際の西郷どんとは似ても似つかぬ容貌だったとは、西郷の奥さんによる決定的な証言がある。(この話は長くなるのでオワリ)
上野の西郷隆盛像は、かの彫刻家・高村光雲の作で、横ッちょのチンマリした可愛い犬は、馬の彫刻でならした後藤とかいう人の作(光雲先生は犬が苦手だったのか)。銅像をプロデュースした面々は、ほんとはもっと大きくて立派な犬にして欲しいと頼んだらしいのだが、この写実主義派の後藤さんは、西郷の飼っていた犬が、桜島犬という小型犬種だった事実を知り、ガンとしてゆずらなかったらしい(こうゆう職人肌の人って好きです)。この人にほんとの西郷像も頼んで欲しかったよな。 どうでもいいけど、犬猫好きとしては、銅像よりも実物の「桜島犬」のほうを見てみたいものですね。