春の煎茶

osamuharada2012-04-12

島のアトリエも春めいてきた。急ぎの仕事を発送した後での一服。畳の部屋の窓をあけはらい、ときどき聴こえるウグイスやメジロたちの長閑な声に聴きほれる。リスも遠くで鳴いている。縁先の山桜が満開になり、春風に吹かれて、花びらが部屋の中に舞い込んでくるのは風情がある。こんな日には茶ウケの甘いものなど必要としない。大ぶりの祥瑞の茶碗で、たっぷりと鹿児島の煎茶「霧島」を喫した。やがて春が過ぎれば、今年の一番早い新茶が屋久島からスタートする。しかし口惜しい思いながら、静岡以北の煎茶は多分もう飲まないだろう。
3.11後の、この一年を振りかえると、昨年の春は沖縄に滞在。すでに初夏の、沖縄特有「うりずん」の季節になっていたので、例年通りのユッタリした春は体験しそびれた。もっともあの頃の東京にいたら、史上最悪の人災のせいで、とても落ちついた気分で春は楽しめなかったとは思うが。
そういえば去年ひと夏は、冷夏のパリにいたため日本の酷暑からは逃れることができた。また冬の前には、暖かい沖縄とハワイにいたので、寒さ知らずに過ごすことができて助かった。トシとると暑さ寒さが堪え難くなる。その点では良かったけれど、四季が無いことのつまらなさもよくわかった。日本に四季の移り変わりがあることの、いかに素敵なことか。忘れかけていた春の日を、やっと今日は思い出すことができたようなわけで…。
    う ら ら か に き の ふ は と ほ き む か し か な    万太郎
去年はなくて、一昨年の春と煎茶のこと→[id:osamuharada:20100411]