古本屋めぐり記

osamuharada2012-04-08

久しぶりに東京へ戻って所用がすむと、まずは神保町古書店街をめぐり歩く。美術ファンとして、「一誠堂書店」では、大阪の中村という人の富岡鉄斎コレクション自選の自費出版による『鉄斎画讚』(大正二年刊)という珍しい作品集を見つけて買った。他では見たことのない貴重な図版が数多くあり大満足。やっぱり古本屋めぐりはいつでも楽しい。一誠堂書店 HP→http://www.isseido-books.co.jp/ 以前書いた一誠堂書店[id:osamuharada:20090516]
日本史ファンとして、江戸時代の古典籍を扱う「大屋書房」では、十七世紀初頭フランスで出版されたらしきアジア地図(写真はその部分)の複製を買った。面白いのは、この古地図のなかの日本列島には北海道がないこと。最北端がAquita(秋田)となっている。関西から中国地方にかけてが太めで、九州と四国が小さい。そのかわり奄美諸島から沖縄本島、最西端の与那国島とおぼしき島々のところまで、何故かきっちりと描かれている。隣のCorea(朝鮮)は奇妙に細長くて、台湾もなんだかヘンテコなのにだ。沖縄=邪馬台国説を支持するヤツガレにとって、この地図はとても興味深い。四国と九州に面した海洋にBungo(豊後)と大書してあるのは、黒潮が瀬戸内海に流れ込む豊後水道のことだろう。ぼくの考えている倭人のルートだな。
また日本国名が、仏語なら Japon ジャポン であるはずが、この地図には Iapan と書いてある。「イァパン」と読むのか? 日本と古くから外交があったポルトガルなら「ヤーパン」オランダなら「ヤポン」と、「Ja」をJ音の「ジャ」とは読まずに Y音で「ヤ」と発音する。ドイツ語でも「ヤーパン」だ。そもそも日本という国名は、遣唐使を送っていた七世紀中頃から始まるらしい(日本最初の歴史書日本書紀」が書かれたのは720年)。それまでは邪馬台国群の倭(わ)と同じく、「倭」と書いてヤマトと読ませていたという。ヤマタイ国とヤマト、どちらも「Ya」音なのが気にかかる。「ジャパン」と呼ぶ英語圏との外交がまだ無かった時代の「ヤーパン」こそが、外国からみた日本の正しい呼び名だったのかもしれない。
ついでながら、国内でしか通用していない「日本」は、ニホンでいいのかニッポンと発音するのか? 日本銀行が発行するお金と、郵便切手には NIPPON と書いてあるけれどね。東京の日本橋はニホン橋、大阪の日本橋はニッポン橋だ。我々はニホン人なのか、或いはニッポン人なのか、どっちなんだ? いずれにしても外国人には通用しないのが悲しいよね。現代中国語(北京語)では「日本」を「リュウベン」と読むそうだ。あんまり嬉しくはない発音だな。中国でも華南音では Yatpun と発音するらしい、これはヤパンに近いよね。かつて八切止夫という歴史家は、ヤパン=八幡だったとし、海洋系の倭人と結びつけていた、これも興味深い説。イタリア人のマルコポーロ(1254〜1324)は、ラテン語で黄金の国「ジパング」と呼んだが、中国(元)に行っただけで日本には来ていないし、これが通説となっているジャパンの語源だとは、とても思われない。などと古本屋めぐりの後のヒマつぶしでした。 大屋書房 HP→http://www.ohya-shobo.com/