年賀状

osamuharada2012-01-03

旅の途次、初めての土地では、あまり正月という実感がわかないのですが、新年おめでとうございます。今年も引き続き、あいも変わらぬヒマツブシの駄文でヨロシクです。
《 まず一夜明ければ元朝の、門に松竹、しめ飾り、床に橙、鏡餅 》というような正月気分は、生まれ育った土地に帰ってこそ、ほんとは味わい深いものなのでしょうね。もっとも年賀状を書いていたのも二十代くらいまで、というひどい筆無精ですから、まともな正月気分に浸るということもないわけですが。こんな無愛想にもかかわらず、なかには年賀状をくださる方もいるので、毎年正月はバツが悪い、申しわけのない気分になるのです。
年賀状で思い出したこと。(写真) むかし拙著『ぼくの美術帖』を上梓したとき、憧れの鈴木信太郎画伯に本とご挨拶の手紙を送ったところ、新作展の案内状をいただいたことがあります。そこにはご自筆での署名と、さらにぼくが本に書いて、子供の頃の絵にサインを真似たことから、わざわざ【 す、】とまでオマケに書いてくださったのでした。ファン心理というもので、これはとっても嬉しかった。そしてその明くる年から、お亡くなりになる前年まで、忘れずに年賀状をくださったのです。若造のぼくが年賀状書かない主義を、偏屈にも押しとおしていたにもかかわらずですよ。それでこのときばかりは、あまりに筆無精の、われとわが身をさいなんだものでした。無礼にもほどがあるよね、といまさら後悔しても始まらない。とゆうような、いまだに無礼者のままで旅する正月です。