大混戦ルイ・ド・フュネス

osamuharada2011-12-08

フランスの「ドタバタ喜劇」映画を観なくなって久しいが、60年代半ばから70年代までは、ルイ・ド・フュネス【 Louis de Funes(1914〜1983)】が、ぼくのお笑いアイドル・スターだった。フュネスをよく観たのは、子供の頃から好きだったハリウッド映画のジェリー・ルイスが引退した次の時代にあたる。そして70年代半ばから、ぼくの好みが初期(ドタバタ時代)のウッディ・アレンに移るまでの間が、ルイ・ド・フュネスだったわけ。好きなコメディアンが、三人ともユダヤ人だった。
ルイ・ド・フュネスものは、邦題の『大混戦』シリーズの警官役や、『ファントマ』シリーズでの警部役が、当たり役としては可笑しかった。しかしどんな役を演じても、やかましくて、ズルくて、がめついオヤジなのに、なんか可愛いなァと思わせるところは変わらない。ワンパターンといえばそれまでだが、他に類をみない芸風だった。写真は’68年『グランド・バカンス』。こんな顔したオヤジです。
日本でDVDになった、フュネスが準主役の’65年『大追跡』というロード・ムービーでは、撮影が、大好きなアンリ・ドカエで、しかもパリから南仏、イタリアへと巡る観光映画の趣向だから(ぼくには)たまらない。カメラのアンリ・ドカエといえば、ルイ・マル監督『死刑台のエレベーター』『恋人たち』や、トリュフォー監督『大人は判ってくれない』、ルネ・クレマン太陽がいっぱい』などを撮影した、凄いカメラマンなのですよ。それが、こんなくだらない喜劇映画も撮っていたわけよね。風光明媚な画面とドタバタの組み合わせが変テコで、しかも監督は三流。名匠アンリ・ドカエもヤル気がしなかったでしょう。フュネスも脇役で本領を発揮していない。まだノンビリとして美しかった1965年のフランスとイタリアの風俗と風景、それに当時の自動車だけは一見の価値あり。
ルイ・ド・フュネスが、ガミガミ親爺というキャラクターで一世を風靡したのは、フランス国内だけの話で、ドタバタ喜劇を軽蔑していた日本の映画マニアには馴染まなかったようです。なのでルイ・ド・フュネスのことを人に話そうと思っても、ほとんど誰も知らない。で、しかたなくココに書いているだけのことです。代表作の『大混戦』シリーズは、DVDにもなっていない(ビデオは持っているけど画面が汚い)。こないだパリで売っているのを横目で見たのだが、クヤしいことにフランス製のDVDはリージョンが違って日本じゃ観られないそうだ。 数年前にパリでTVを見ていたら、フュネスが亡くなって何周忌だったかの特別番組を、一週間通しで毎日やっていた。俳優になっていたフュネスの息子が出演して、TVで我が父を語るところが微笑ましくて印象的だった。あの芸風のままのオヤジだとしたら、家族は大変だったろうが、ほんとは優しい父親だったらしい。
’79年『サントロペ大混戦』のタイトルとファーストシーン。


’70年『ルイ・ド・フュネスの窓際一発大逆転』