エグルストン写真集

osamuharada2011-07-19

冷夏のパリへ来たせいなのか、くだらない節電騒ぎや、放射能の見えない恐怖について、思い煩うことがなくなった。遠く離れて日本をみれば、あまりにひどい感情論ばかりが横行して、客観性を見失っているとしかみえない。また結局はカネと仕事のことばかりに執着する大人が多いのにはあきれ返る。将来のある子供たちのことを、まず先に考えるのが大人の理性というものだろう。われ先にと、自分の損得のことしか考えられないとは、情けない大人たちではないか。とにかく事大主義もいいかげんにしてほしい。
サンジェルマンの書店「ラ・ユンヌ」にて、エグルストンの新しい写真集 WILLIAM  EGGLESTON  PARIS  を買った。Steidl 社刊。 カラー写真の大家らしさがあり、どこか泰然自若として、ふっきれた感がある。日本の感傷的な癒し系写真家など足元にも及ばない豪胆さがそこにある。ほとんどが意味をなさない抽象の写真であって、眺めていると「無為自然」という言葉が思い浮かんだ。ただそこには抽象の純粋な美が宿るのみ。あるがままにまかせる境地に至ったものか、それが心地よい表現として実を結んでいる。残念なのは、写真とは別に、手描きの抽象画のようなものが掲載されていて、これはちょっといただけないな。自信というものは芸術家にとって、なくてはならないものだが、度をこすと思いあがりになってしまう。ファンとしては、是非、写真家として素直に生きて欲しいですね。
エグルストンの写したパリの抽象写真に影響されて、そうだ、ヤツガレも当分は老子の語にある「無為自然」というやつでいってみよう!と思いはじめました。