アトリエ日記

osamuharada2011-02-23

山と海の中間にある、ぼくの古いアトリエ。今日は四月並みに暖かく、絵を描くには日差しがちょうどよい。むかし描いて途中でほっておいた絵に加筆する。長方形のキャンバスを縦位置にして描いていたものを、横にして壁にかけてみたら断然こっちのほうがいいじゃないか、と今ごろになって気がついた。抽象画ではよくあることで、意味がないからどうやったって自由なのです。そのうちまた気が変わるかもしれないし、未完のまま終わる場合もある。いったいなにをもって絵が完成したといえるのだろうか。わが師・川端実先生は、「どこで筆を置くか、それが一番難しいところだ。」と教えてくださった。しかしそれは悩むことではない、アブストラクトを描く楽しさは、むしろそこにあるのだから。今年は四月から七月にかけて、川端先生の大きな回顧展があるので、いまから胸が高鳴る。
散歩から帰って、煎茶を喫す。こんどはコラージュ用に使う切り抜きをしておこうと、洋雑誌や古本を漁っているうちに、すっかり目的を忘れて読み耽ってしまった。気になることが古雑誌に出ていたので、美術史の本をいくつか持ってきて調べていたら、ついそっちのほうに夢中になってしまい、午後はずっと読書とノート。オーストリアの登山の記事、アルプスの写真などから、日本の山岳信仰のことへ、江戸時代の「富士講」ブームについて調べていたらいよいよ面白くなってきて、北斎と「富嶽三十六景」の版元との関係がよくわかって謎が解けた。そして富岡鉄斎の富士山図の画集へと、また我田引水の研究テーマへ。気がついたらコラージュの切り抜きのことはすっかり忘れていた。
チュチューと鳴く鳥の声で、窓の外に目をやると、椿の枝から枝へとメジロが飛びかっている。椿の花の蜜を求めて、あいかわらず忙しそうだな。ぼくが今年になって初めて見たメジロは、ちょっと太りぎみなようだった。ウグイスの「笹鳴き」はまだ聴こえてこない。
前に書いたメジロのこと→[id:osamuharada:20090204]