3Dと大画面

osamuharada2011-01-30

3D映画と大画面が好きなオトコである。わが幼少のみぎり、赤青メガネ時代の「立体映画」を有楽町日劇で観た。題名も年代も忘れたが、モノクロの日本映画で、遊園地の飛行機が眼前に飛び出す場面にただただ驚愕し、たちまちやヴァーチャルな映像ファンとなる。まともな映画とは別物の、アトラクションの楽しさを知った。
小学生の頃、巨大画面というものにも魅了された。日比谷帝劇で『これがシネラマだ』(’52年)という、3台の映写機を横につないだ大画面の映画が最初だった。まだ日本にはなかったジェットコースターの場面では、あまりの臨場感に、椅子から転げ落ちて親父に笑われた。その後、大画面のトッドAO方式『八十日間世界一周』(‘56年)や、70mm映画『ベン・ハー』(’59年)などを観るに及んで、大画面と3Dは娯楽映画の金字塔である、と明るい未来を信じて疑わない映画少年となった。しかしどちらもいつしか映画界から忘れ去られていた。
三十代に観た久々の3D映画『13日の金曜日PART3』(’82年)は、素晴らしくよく飛び出した。カラー映画で、新式の紙のメガネはグレーの特殊なフィルムの簡単なものだが、殺人鬼ジェイソンが投げつけた斧が、ヒュルヒュル回転しながら飛んでくる。眼前1mのところまで来た。これには思わず首を振ってよけざるをえなかったのである。映画タイトルでは、テーブルに置かれた骸骨の眼から、カートゥン・スタイルの3D文字がビューンと飛び出してピタっと空中に止まる面白さ。レタリングも美しかった。3Dとしては傑作だと思ったが、しかしながら映画としては正真正銘のゲテモノであった。
超巨大画面のほうでは、20年前にニューヨークの自然史博物館で観た「I MAX」に驚いた。視界いっぱいのスクリーンの中へ入り込んでしまったらもう逃れられない。歴史の中へのヴァーチャルトリップを体験した。残念ながら現在のI MAXシアターは、お子様向けの見世物小屋と化しているようである。
というような長い経歴を持つヤツガレが、昨今なおもめげずに3D映画『アバター』と『トロン:レガシー』に、ついつい期待を寄せちゃったのはムベなるかなでしょ。最新デジタル映像の3D画面は映画館で見なくちゃ、と六本木ヒルズで『アバター』を観ましたよ。ところがまずメガネが重たくて、しかもサングラス並みに色が濃いので画面が暗くなる。肝心かなめの飛び出し率が、低く過ぎてつまらない。内容は映画というよりアニメといったところ。これなら3D『トイ・ストーリー 3』を子供とでも一緒に観たほうがましだろう。
トロン:レガシー』は、前作『トロン』(’82年)が傑作だったし、ハリウッド俳優で一番好きなジェフ・ブリッジスが再登場すると知って、おおいに期待した。それに川崎では3Dのみならず、なんとあのI MAXの大画面で公開中だという。久しぶりに興奮して映画館へ向かったが、結果はひと言、ザンネン!  ひとえに監督の無能ぶりが目立つだけ。前作のほうが映画としては遥かに上をゆくな。飛び出し率も『13日の金曜日』に負けている。こっちは映画でもアニメでもなく、ただのゲームだね。時間と金返せ!的な噴飯モノ。やはり「大画面&3D」は、B級ゲテモノ映画から脱することは、ついにできなかったのだと諦めた。それに、さすが六十過ぎたら、いい加減もう飽きちゃうよな。