冬のアトリエ

osamuharada2011-01-17

絵を〔自然光〕だけで描くようになって以来、冬のアトリエは日照時間が少ないため、ほとんど開店休業中です。天井が高いため、暖房はぜんぜん効かない。陽だまりが暖かいからといって日中に描きだしても、すぐに暮れて寒くなる。幸い、職業画家の道を選ばなかったので、描きたい気分の時にだけ描けばよろしいから、無理することはない。締め切りもない。誰に期待もされないし、もとより展覧会などやって人さまにお見せする気もまったく無いので、ひとり気ままに絵を描く完全な自由がある。この自由というものは、何ものにもかえがたい。
自然光で絵を描くことには、画家が自然と一体化する喜びがあるのですよ。絵の具は外光を受けて輝くものだから、画面に集中するだけではなく、画面の外の世界を同時に感知することができる。自然光は時間とともにゆっくり変化し、絵の表情もまた自然のままに変化する。そして暗くなったらもう見えない。夜に、人工的な強い照明をあてても、自然のほんとの色彩は戻ってこない。絵も深い眠りについて、夜が明けるのを待っている。
最近は、コンピューターから発光される、ヴァーチャルな画面にもすっかり馴染んでしまった。しかしパソコンやTVモニターの疑似自然な色彩は、ネオンサインと同じように発光するもので、うす暗い場所でないとハッキリ見えない。二十四時間いつでも見ることができるのはいいが、それでもやっぱり太陽から届く〔自然光〕の豊かさには、遠く及ばないと思うな。それに、季節とともに移り変わる自然光で絵を描けば、自然の中に生きとし生けるもの、としての自分を強く感じさせてくれるもんね。ヤツガレは抽象画家のはしくれだけれど、外光だけで風景を描いたシスレーのような印象派画家を尊敬するものです。さて今年もまた、そのうち日が永くなり暖かくなってきたら、自然光式アトリエも開店する予定です。
  パ ン む し る 手 に 春 近 き 日 ざ し か な     万太郎