麦藁手の茶碗

osamuharada2010-12-08

子供の時分は、のべつ焙じ茶ばかり飲んでいたので、オヤジから「お茶飲み小僧」と異名をつけられていた。というくらい、いつも焙じ茶が欠かせなかった。近所に今もある「魚河岸銘茶」という店の前を通ると、大きな茶焙じの機械から、いい香りがしてきて、いつもうっとりとさせられたせいもあるかな。煎茶にハマるのは、二十代後半からだから、それまでは焙じ茶ひと筋でした。長じて煎茶が好きになると、焙じ茶は、食後それも和食の後にしか飲まなくなった。
煎茶の茶碗にもコルようになってくると、それまではあまり意識しなかったのに、焙じ茶用の茶碗も気に入ったものが欲しくなってくる。しかし磁器の染付けなどの煎茶茶碗では、焙じ茶はどうもなじまない。素朴でユッタリした形の陶器がいいのだが、民藝が嫌いになった頃だったから、なかなか見つからない。そのうちに、祖父が死んで、オフクロが形見にもらった、ぶあつい「麦藁手」の湯呑茶碗が目にとまった。京都の陶工、清水六兵衛の作。六角に清の押印が底にある。祖父が戦前から使っていたものだというから、四代目か五代目の六兵衛か。そこで六客あるうちの二客をもらい永年使っていた。現在はオフクロもいないので、すべてヤツガレが引き取って、二代にわたる形見として、焙じ茶用に愛用している。そしていまも、焙じ茶専用の湯呑茶碗はこれだけ。陶土のボッてりした感じや、鉄釉のボカシが、麦わらと呼ばれる縞の柄に、よく合っていると思う。そのうち焙烙(ほうろく)を手に入れて、祖父のように自ら茶を焙じて飲んでみたい。