アケビ

osamuharada2010-11-07

いつもの島の散歩道。薄紫色のアケビがあちこちに実ってぶらさがっている。高所はとどかないけれど、低いところの蔓ならステッキでひっかけて簡単にもぎ取れる。秋日和の散歩の収穫ですね。食べる寸前にちょっとだけ冷蔵庫で冷やしておいて、煎茶や紅茶の茶ウケにしています。アケビには、香りはなく、苦みも渋みも酸味もない。まったくクセのない純粋な甘味があるのみ。食べるといっても、ゼリー状の果肉が小さな種の粒と離れにくいから、結局は舌の上でその甘さをコロがして味わうだけ。しかしこの甘さには清冽さがあり気品がある。これでなかなか奥深い甘味なのです。小鳥たちのスイーツにこそふさわしいものでしょう。でもたしか、人間も大昔からアケビは食していたはずだったなと思い出し、自著「ぼくの美術帖」の縄文時代のところ(美意識の源流・その一)を久しぶりに読み返してみた。自然物採集文化が紀元前の一万年間も続いた縄文時代。植物性の食べ物は、《 その種類も四季の変化をともない豊富でした。中部山岳地方でみとめられた例は、くり、かや、やまごぼう、さんしょう、あけび、やまいも、わらび、ぜんまい、うど、のぶどう 》と書いてあります。だとすると、なんと日本人は12,000年の間も、これらを食べ続けてきたことになる。アケビの蔓(つる)は、編みカゴやポシェットなど細工物にも使われていたという考古学的資料が発見されているから、われわれのご先祖さんたちは実にセンスがよかったなあ。無駄なゴミも出さなかったしね。