北園克衛.com

osamuharada2010-10-09

【お知らせ】五年前にぼくが始めた[北園克衛.com]は、今年いっぱいで終了することにいたしました。
最近は若い人たちの間でも、詩人として、グラフィックデザイナーとしても北園克衛の名前が知られてきたようなので、一介のOld北園ファンとしては嬉しきかぎりです。ほんのすこしは、お役にたてたかなと、いささか自負もしております。[北園克衛.com]は、代表的な詩集と短編小説の全文を、データとしてのみ提示するだけの、いたってシンプルなサイトです。デザインに関しては、WEBでこれを再現するのは到底無理だろうと、最初から除外してあります。
北園克衛.com]→ http://www.kitasonokatsue.com

拙著『ぼくの美術帖』(パルコ出版)で北園克衛をとりあげてからは、すでに二十八年もたってしまいました。そこには、それよりさらに二十年も昔の、北園克衛の詩集や同人誌『VOU』に出会ったことなどが書いてあります。ぼくが青学の高校生の時分でした。
先週、その本にも書いてある、青山学院前の「中村書店」に散歩がてら寄ってみました。奥のガラス張りの書棚に『VOU』のバックナンバーが、ずらりと並んでいたので、もう全冊分は揃ったのですか?と聞いてみました。残念ながら戦前のものが、なかなか見つからないそうで、全冊完遂は難しいようです。諦めてバラ売りにしようか考慮中とのことでした。それでも今や一冊の値段が五千円を超えているので、これから若い人が北園克衛デザインを見るには、展覧会か、多摩美アーカイブしかないかもしれません。(近くは、世田谷美術館で10月23日から12月12日まで)
写真は、先日の中村書店で買ったひとつ、紀伊国屋書店のPR誌『机』1953年11月号。編集長兼デザイナーが、北園克衛です。書店が発行していた半世紀も前のフリーペーパーですね。表紙及び中のイラストも、北園克衛自身です。(「机」の題字は別の人)  たまたまこの号は「特集・現代映画の断面」とあって、ぼくには興味深い内容です。読んでみると、この特集を面白くしているのは、適材適所に人を配する、編集の上手さにあると気が付きました。デザインはもちろんですが、北園克衛は編集長としても大変に優れていたことが、今さらながらよくわかって感激しました。そして編集後記の後半には、詩人らしく、こんなことが書かれていました。
〖 10月から11月にかけて,番町から赤坂の谷間を越え,青山一帯にかけての高臺のプロムナアドは素晴らしい.
雨に洗われた美しいアスファルトの道をゴクレニウス式に頭を動かしてみたりアリストテレス式に動かしてみたりしながら,
気紛れにあるいていくと,思いがけないところに素敵なプルニエを食べさせる店をみつけたりする.〗
「VOUの編集後記」→[id:osamuharada:20090901]