銀座四丁目の「三越」が隣へ拡大をしてオープン。銀座で一番大きなデパートになった。銀ブラのついでに、ちょいとのぞいてみました。新旧の建物は、横丁を隔てて上階からは合体してつながり、新館は旧館八階までの古い階層に合わせてあるため、各階の天井のタッパは異常に低いままだ。フロアがだだっ広いのに天井が低く迫ってくると、息苦しくなっちゃうな。買い物には全く興味が無いので、ブランド店が小さなブースに分かれて軒を連ねている中を歩くと、まるで迷路に入り込んだよう。広大無辺な展示会場のようでもあり、ここから無事に脱出ができるか、一瞬カフカ的不安におちいる。出口がどこにあるのか、ゼンゼンわからなくなるのね。
ところがエスカレーターで上がって九階のフロアに来てみると、ヤツガレは、そこがバカに気にいってしまったのだった。この階だけは天井も高いし、晴海通りに面した総ガラス張りの窓も高くて広々としている。それより、素敵なのは窓の向こうの景色だろう。日暮れてくると特別に映えてくる。通りの向う五丁目側の巨大な「鈴木その子」の広告看板が、煌々とライティングされて、夜空に浮かびあがるからだ。広いガラス窓から見える唯一の景観は、十年前に亡くなっている「その子」のでっかい白塗り顔だけ。現在も含み笑いをして、こちらをじっと見つめている。これには現代の不安や不毛さえ感じられ、つまらん現代美術などは顔負けしちゃうだろ。この九階には、「みのりカフェ」と「みのる食堂」があり、ドでかい「その子」を眺めながらの、お茶スルもあり飯までも食える(ぼくはパスするけど)。おまけにこの九階には、「銀座出世地蔵尊」なるものまでが御わしまして、おごそかにして、かつ不気味なフロアでもあるのですよ。何を目指しているのかは判然としないけれど、個人的には是非ここ三越九階を、「銀座の新名所」としたい。
以前書いた「銀座異聞」の時には、レストラン「みかわや」の、蔦のからむ木造二階の店舗は壊されて、新生三越の中に組み込まれるものだと勘違いしていたが、デパートの内部には入らずに、昔と同じ場所に、三越の建物の一部でありながら、独立をして開店していました(写真)。老舗の矜持というものでしょう。早速行ってみると、ご主人が昔どおり満面の笑みでお迎えしてくれたので安心しました。前より広くなったけれど、内装は昔の面影を残したままで懐かしい。もちろん味覚も昔ながらの銀座の洋食なのでした。ぼくは久しぶりに、舌にのせてとろけるようなビーフ・シチューを頼みましたよ。
銀座異聞→ [id:osamuharada:20081222]→ [id:osamuharada:20100528]