本と時代

osamuharada2010-08-23

夏休みの研究テーマにと買っておいた、世界情勢や経済関係の新刊本をいくつか読んでいたが、およそ楽しんでユックリ読書をするというような気分にはなれなかった。その反動で、煎茶を喫する時などには、何かもっと違う興味の本が読みたくなり、適当に古い本を引っ張り出してきて、ついには読み耽ってしまった。前に何度も読んでいるのに、読み返してまた面白い。例えばこの岸田劉生『劉生繪日記 第三巻』(昭和54年龍星閣刊)などなど。 ヤツガレの場合だけど、近頃の新刊本ではこういうことが少ないなと思った。
ところで、前述した『出版状況クロニクル2』(論創社刊)によれば、なんと去年の一年間で七万六千点もの新刊本が出版されたという。これにはビックリしたね。つまり平均すれば、毎日二〇〇点あまりの新刊本が世に出ていることになっちゃうよ。 というような【新刊バブル】の時代なのだそうであります。しかしそんなに出したら、すべてが書店に並ぶことなど到底ありえないだろう。これじゃ見ることもできないじゃないか。 はたして現在の新刊本は、どうなっちゃってるの? 変だなとは思いませんか。 これもまた昔から続く出版流通の【再販委託制】にモンダイ点があるらしいよ。ごく簡単に云うと、
❶「出版社」が新刊本を出すと、日販やトーハンなどの「取次」(大問屋)に、委託という形で本を預ける。そして「取次」から全国各地の「本屋」(小売店)に新刊本が配布される。 ☆ この時に「出版社」は新刊本の代金を、全額「 取次」から先に貰っちゃう。
❷「本屋」は新刊本を買い取るわけではなく、委託されているだけだから、一カ月ほどして、売れ残った新刊本は「取次」を通して「出版社」に返本する。 ☆ 当然「出版社」は先に貰った代金のうちから、返本分の金額を「取次」に返却しなくてはならない。
❸「出版社」に金の余裕があればすぐ返せるが、無い場合は、急いでまた別の新刊本を刊行して、「取次」に先払いをしてもらい、その代金のうちから、とりあえず前の返本分の借金を返しちゃえばいい。 ☆ もし次の新刊本が売れに売れたりすれば、「取次」への借金などすぐに返せるが、あくまで次の新刊本が売れたらの話なのね。
❹しかし次から次へと出す新刊本が売れないと、さらなる返本分の借金が雪だるま式にふくれ上がるから、「出版社」はさらに沢山の新刊本を出して【自転車操業】におちいる。 ☆それに 失敗したら【倒産】が待っている。
というワケで、本が売れない【出版不況】時代なのに、本だけ【新刊バブル】が起きているのですよ! どーりで、たいして面白くもない新刊本が、やたらゾロゾロと世間に出てくるんだな。 クロニクルには、≪新刊バブルの破綻も時間の問題でしょう≫と、あっけなく書いてあった。これから日本の「本」はどうなってゆくのだろうか?
「雑誌」のほうも同じく【再販委託制】が問題。さらに【広告】という問題点 があり二重苦。 → [id:osamuharada:20100807]