木村荘八と猫

osamuharada2010-06-15

芸新6月号のコラムに「木村荘八と猫」と題して、林忠彦撮影の写真一葉と、猫の挿絵に、猫の絵のある荘八自筆の葉書を掲載しました。絵と猫好きの方に読んでいただきたい。ぼく自身も昔の飼い猫を思い出してしまって、書きながらちょっと胸にジンときちゃいましたよ。
芸新には載せなかった、この写真左側の本。木村荘八著「絵のある手紙」(中央公論美術出版、昭和45年刊)は、荘八没後に、編集し出版された書簡集です。ヤツガレの愛読書でありますが、荘八に絵入りの手紙を送られた面々が凄い。岸田劉生岡鹿之助、小杉放庵、中川一政など画家から、里見紝川口松太郎安藤鶴夫花柳章太郎伊志井寛にいたるまで、ごく親しい友人たち宛ての、絵入り手紙の選集なのです。手紙に描かれた挿絵は、頼まれ仕事とは違って、一般に公開されないものとして生前に描いていたから、いよいよもって自由奔放に描かれて、軽妙洒脱そのものです。なにしろ挿絵の天才が描いた、プライベートな挿絵だから見飽きることがない。この特装版の箱にも、荘八ゑがく猫の図が出ていました。「ペッチン 二年」と横に書いてあります。
この書簡集を編集した小高志郎の「あとがき」に、こんなことが書いてありました。【 朝は十時から十一時ごろ起床 午後は南縁で油繪をかき 夜はさしゑ 随筆 そのころから頭が ますます冴えて 小唄 時代考証 日記 手紙と大抵 夜明けごろまで 二階の日本間の 本と ランプと 繪ノ具と 猫にかこまれた 先生の城で 仕事をつづけられた 】 林忠彦撮影のこの写真は、この文のままに、幸せそうな荘八先生と猫たち(写真の中に4匹)が写っていました。
コラムに載せた猫の絵入り葉書2枚は、個人蔵となっていますが、実はぼくの持ってるものです。→[id:osamuharada:20051031]