ぼくと俺

osamuharada2010-02-18

NHKの大河「龍馬伝」、考証があまりにデタラメだから見たくなんかないのに、時々のぞいてしまう。先日は黒船の頃の吉田松陰が出てきて、海岸でやたらと大声でわめいていたが、「僕は、僕は!」を連発する。一人称「僕」は、幕末から明治にかけて、薩長土肥の下層のサムライの間から流行ったといわれている。しかし本物の侍なら、「拙者」や「それがし」、または「身ども」などというはず。くだけて言うなら、西日本では「わし」が基本で、関東以北なら「俺」でいいだろう。では、彼ら勤皇の志士たちの正体は何なのか?は、陰謀史観でなら解明できちゃうけど、ここには書けません。
それにしても男の一人称って気になるよね。こうやってブログを書く時にも、一人称をどうするか?ちょっとだけ考えてしまう。「僕」と書くべきか、シモベじゃないから「ぼく」にしようかとか。しかしいいトシしたジジイが「ぼく」を使うのもヘンかな? かといって「自分」じゃ二等兵みたいだし、「俺」じゃ未知の人に対して乱暴すぎる。古い友達となら「俺、お前」ですむし、いつも仕事上や目上の方への一人称なら「私」を使っている。けれどブログで「私」は丁寧だが、女性と間違われるオソレがある。古くは「僕」と書いて、謙称のヤツガレとも読むけれど、コレは平安時代からある言葉なので、本気じゃなくふざけてなら使える。「小生」も同じ扱い。などなど、英語なら一人称で悩むことはないのにね。
「僕」は近代になって流行った一人称。なのでどこか垢抜けした西欧風な感が「僕」にはあるけれど、そのかわり「俺」のような男らしさはないのが欠点だ。「僕」はヘタをすると草食系。しかし「俺」のほうも場所を間違えると、下品で、ほんとは弱いのに虚勢を張ってるようで、上から目線にもなりかねない。 ぼくの記憶のなかでは、関東で「俺」というセリフが男らしく似合ったのは、かつての十一代目市川団十郎が演じた「助六」(上の写真)ということになるね。江戸っ子の代表選手「花川戸の助六」が啖呵を切る時の「俺」はカッコよかった。オレの「レ」はもちろん巻き舌ですよ。 それが息子の十二代目の助六では、野暮ったい「俺」になり、孫の海老蔵助六では頭の悪い「俺」に聞こえちゃうところが、悲しいよな。ついでに、老いても「僕」がよく似合っていた男は、なんといっても俳優 島田正吾の、普段使いの「僕」だった。いずれにしても、むかし男ありけり、でした。