シスレーと印刷

osamuharada2009-11-27

12月号の芸術新潮、ぼくのコラムは「光と雪のシスレー」です。印象派の風景画家アルフレッド・シスレーについて書きました。日本ではマイナーな感じなので、話をしたって誰も知らない。書かれた本もない。ぼくが思うには、シスレーの絵は西洋というより東洋的な写実に近いので、実物を見たら日本人は好きになるはずだ。特に広重好きなら必ずハマるでしょう。 http://www.shinchosha.co.jp/geishin/200912/invitation.html(年内いっぱい芸新HPに出てます)
ところで、コラムのために「雪のルーヴシエンヌ」という図版を選んだけれど、この絵の持ち主オルセー美術館はタダでは掲載許可をしてくれない。なので、編集部に支払ってもらって(おまけに高い)、データを借りてきて、やっと載せることができました。あァそれなのに!送られてきた12月号を見たら、絵の色が原画と全然違うぞ、原画は美しいグレーで統一されているはずが、印刷では真っ青じゃないか。ピカソの「青の時代」じゃないんだぜ。  前に書いたけれど、ぼくの持ってるシスレー画集の、印刷の色が三冊三様ですべて違ってガッカリしていた。(id:osamuharada:20091022)  印象派は黒の絵具を嫌って、三原色を混ぜて微妙なグレーを作っていたようだから、それで製版の機械がブレてしまうのかもね。ポジフィルム写真なら校正刷りで印刷物とつき合わせられるけれど、現代のデジカメで撮ったものをデータ化して、デジタル印刷する時代では、さらに原画の色彩再現は難しい。機械なんてアテにならないもんね。そのうえアメリカなどでは6色印刷が常識なのに、日本の印刷屋さんの場合は、いまだに4色印刷機で平気なんだから、日本人の色感はニブイままだ。これじゃ出版物を通しての、美術なんかに興味が湧くわきゃァないだろうな。
いま芸新のHPで、シスレーの絵を見てみたら、印刷された色とは、また違って映っている。発光体のモニターで見るデジタル画面は、パソコンというくらいだから、パーソナルにそれぞれの色合いが調整されてしまい、もうどれが実物のほんとの色なのか、かいもく判らない。印刷もWEBもダメ。今のところ、色彩の再現に最も優れているのは、日本人が造ったハイビジョン映像とブルーレイ映像に軍配があがるでしょう。 ちなみに今年のNHKハイビジョンでやっていた中国「敦煌莫高窟」の壁画と仏像の色彩は最高でしたよ。これをブルーレイに録画して何度も見ては、再び感銘を受けています。 美術は実物を見るにしかずだけれど、しかし中国に行ったって、なにしろ莫高窟は一般公開されてないんだもんね。